2013年3月19日火曜日

薬理について08(催眠・鎮静薬)


① 睡眠及び夢について述べよ。
② 催眠・鎮静薬について述べよ。
③ ベンゾジアゼピン受容体に対するインバースアゴニストについて述べよ。





① 睡眠・夢

睡眠の生理については不明な点が多く、古来研究対象となっている。脳幹網様体→視床→大脳皮質が意識水準を保ち、この活動低下が傾眠をもたらす。ノルアドレナリン・セロトニン・ドパミン神経系も睡眠に関与している。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、普通の睡眠ではレム睡眠とノンレム睡眠を約1 時間半の周期で繰り返している。レム睡眠は亣感神経系が亢進し脳波では覚醒状態であり、ノンレム睡眠は副亣感神経系が亢進し脳波は徐波である。睡眠にはアデノシン・メラトニン・オレキシンなども関与しており、覚醒から突然レム睡眠となるナルコレプシーはオレキシン含有神経の選択的な細胞死が原因である。熟眠できずに日中に眠気に襲われる睡眠時無呼吸症候群は事故との関連で社会問題化し、またうつ病患者の初期症状は不安や睡眠障害である。夢はそ
のほとんどをレム睡眠時に見ていて、翌朝覚えているのは、最後のレム睡眠時の夢である。古くから研究対象とされ、記憶に関与していると考えられている。



② 催眠・鎮静薬

不眠症には入眠障害・中途覚醒・熟眠困難がある。催眠薬とは睡眠と似た中枢神経抑制状態を起こす薬のことであるが、完全に自然な眠りを誘起する薬はなく、長期使用は避けるべきで、連用中止によりリバウンドが起こることがある。バルビツール酸誘導体はGABAA受容体に作用し、抑制性神経機能を亢進させ、興奮性シナプス伝達を抑制することで強い催眠と急激な眠りをもたらす。しかし、バルビツール酸誘導体には強い依存性や過量による急性中毒などの欠点があるため、現在催眠薬にはベンゾジアゼピン(BDZ)誘導体が汎用されている。また、チオペンタールは麻酔前投与薬、フェノバルビタールは抗てんかん薬として使用されている。ベンゾジアゼピン誘導体は安全で鎮静・催眠・抗不安などの作用を持つ。GABAA受容体に作用し、抑制性神経伝達を増強させ、自然に近い眠りを誘発する。倦怠感や刺激応答性の低下などの副作用がある。ブロチゾラム・トリアゾラム・クアゼパム・ニトラゼパムなどがあり、ゾルピデムはBDZ構造ではないが、BDZ受容体に作用する。古くから、ブロマイド・抱水クロラール・パラアルデヒドなどが催眠薬として使用されてきた。1960年頃に奇形児で問題となったサリドマイドも催眠薬であり、最近その作用が見直され他疾患の治療に使用され始めている。

③ ベンゾジアゼピン受容体に対するインバースアゴニスト

GABAA受容体複合体の一部をなすベンゾジアゼピン受容体は、内因性リガンドなどの影響で一部が常時活性化し、アゴニスト非存在下では活性型と不活性型が平衡状態にある。BDZ受容体のアゴニストは、活性型受容体に強い親和性をもち活性型を安定化することで、平衡を活性型へずらしてシグナルを増幅する。これに対してBDZ受容体のインバースアゴニストは、不活性型受容体に強い親和性をもち、平衡を不活性型にずらしてシグナルを抑制する。フルマゼニルなどのBDZ受容体のアンタゴニストは、活性型・不活性型どちらの受容体にも結合するため、アゴニスト,インバースアゴニスト双方のベンゾジアゼピン受容体への結合を阻害し、それぞれのはたらきを抑制する。


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