2013年3月19日火曜日

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【ジアゼパム】ベンゾジアゼピン系抗不安薬、抗痙攣薬、鎮静薬(睡眠薬:国外)
《ジアゼパムの作用機序》
動物では、ジアゼパムは大脳辺縁系、ならびに視床と視床下部に作用して鎮静作用をもたらす。このとき、特異的なベンゾジアゼピン受容体に結合するが、この受容体は、実際の構造としてはGABA(γ-アミノ酪酸)受容体(より正確には、GABAA受容体-Clチャネル複合体)の一部分(α部位)である。この受容体にジアゼパムが結合すると、GABAの持つ抑制作用が増強される。ジアゼパムは全身組織、ことに脂肪組織に再分布し、ベンゾジアゼピン受容体の誘導(発現増強)も引き起こす。人間では、鎮静作用に対する耐性は数週間以内に引き起こされるが、抗不安作用に対する耐性は誘導されない。

《ベンゾジアゼピンの作用機序》
中枢神経系では神経伝達物質として、アミノ酸が多く分布している。主な神経作用性のアミノ酸としては興奮アミノ酸であるグルタミン酸、抑制アミノ酸であるGABAが有名である。グルタミン酸受容体(ナトリウム、カルシウムイオンチャネル)としてはイオンチャネル型受容体であるAMPA受容体、NMDA受容体、カイニン酸受容体がよく知られており、代謝型グルタミン酸受容体としてはmGluRが知られている。GABA受容体ではイオンチャネル型であるGABAA受容体(クロールイオンチャネル)とGタンパク共役型受容体であるGABAB受容体が知られている。
GABAA受容体にはリガンドであるGABA結合部位の他にバルビツール酸系結合部位、ベンゾジアゼピン結合部位、糖質コルチコイド結合部位、ペニシリン結合部位、フロセミド結合部位、フルマゼニル結合部位が知られており、GABAとの反応性の調節を行っている(ペニシリンはGABAアンタゴニストのように振舞うのはこのためである)。
ベンゾジアゼピン系はGABAA受容体と結合するとチャネルの開口頻度を増加させる。バルビツレートと異なり、開口時間を延長せず、高用量負荷してもアゴニスト活性をもたない。その点でバルビツレートよりも安全性が高いと考えられ、抗不安薬、睡眠薬、抗てんかん薬、筋弛緩薬として使用される。ベンゾジアゼピンがクロールチャネルの開口頻度をあげるメカニズムとしてはGABAとGABAA受容体との結合親和性を高めるためと考えられている。言い換えると、GABAの濃度―作用曲線を左にシフトすることとなる。
GABAA受容体の主な作動薬といえばバルビツレートとベンゾジアゼピンであるが、バルビツレートはGABAの最大効力をあげるのに対してベンゾジアゼピンは用量効力をあげると考えられている。
ベンゾジアゼピン受容体には3つのサブタイプが知られている。それは中枢性のω1,ω2および末梢性のω3である。殆どのベンゾジアセピンがω1,ω2を区別しない。ω1が鎮静に関わり、ω2が認知、記憶、運動機能に関与すると考えられているが明らかになっていない。完全アゴニストがベンゾジアゼピン受容体の占有率に応じて、抗不安、抗けいれん、鎮静、健忘、運動失調、筋弛緩の順に発現すると考えられ、副作用が選択に出現しない部分アゴニストの開発が急がれていた。その結果、ゾピクロン(アモバン)やゾルピデム(マイスリー)といった非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が開発された。これらはω1には作用するものの、ω2には作用しないため鎮静作用が殆どで、抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用は弱くなっている。反跳性不眠や依存性もほぼなく、離脱症状も生じないため安全性がかなり高い。ベンゾジアゼピンの拮抗薬としてはフルマゼニル(アネキセート)が有名である。インバースアゴニスト(受容体の基礎活性を抑制する)としてはプロプラノールやアトロピンが知られている。

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