2013年3月19日火曜日

薬理について17(中枢興奮薬・覚醒剤・薬物依存)


① キサンチン誘導体について説明せよ。
② ニコチンと喫煙について説明せよ。
③ 覚醒剤を使用してはいけない薬理学的な理由について説明せよ。
④ 覚醒剤以外の乱用薬物について説明せよ。
⑤ 薬物乱用が若年層で増加している理由およびその対処法を考察しなさい。
大麻使用や所持の犯罪が増加している原因について説明せよ。
⑥ 次の薬物の薬理作用・臨床適用・副作用について説明せよ。





① キサンチン誘導体

キサンチン誘導体であるカフェイン、テオフィリン、テオブロミンは大脳皮質や延髄を興奮させ、呼吸抑制改善や疲労感の低下や思考力の回復をもたらす。これらの作用はホスホジエステラーゼ(PDE)阻害によるcAMP 増加、アデノシン受容体拮抗(A1 にはテオフィリンが拮抗し、A2a にはカフェインが拮抗する)や細胞内貯蔵Ca²⁺の遊離促進作用による神経伝達の亢進によりもたらされる。カフェインは中枢作用が強く、弱い身体的依存性があり、中止により傾眠・イライラ感・頭痛が起こる。また、テオフィリンやテオブロミンは末梢作用が強く、心臓促進・利尿作用・気管支拡張作用がある。

② ニコチンと喫煙

ニコチンは中枢と末梢のアセチルコリンニコチン受容体に対するさまざまな薬理作用と副作用を持つ。多幸感は得られないが依存性があり、側坐核でドパミンを遊離させ、連用中止でイライラ感・不安などの離脱症状が起こる。禁煙補助としてニコチンガムやニコチンパッチおよびニコチン受容体部分活性薬が使用される。また、ニコチンは認知症やアルツハイマー病に効果があると考えられている。先進国では教育により喫煙率が低下していて、日本でも喫煙率は年々低下しているが、日本では若い女性の喫煙率は横ばいかむしろ上昇傾向で、未成年者の喫煙が相変わらず多い。喫煙への嗜癖はアルコールやヘロインよりも高く、吸入後にすぐに効果が現れるので、強化されやすく、吐き気やめまいなどの即時効果には喫煙継続により強い耐性ができる。喫煙と発ガン率は相関関係にあり、呼吸器系・循環器系・消化器系などの疾患のリスクファクターとなる。また、胎児への影響や受動喫煙の問題も深刻となっている。



③ 覚醒剤を使用してはいけない薬理学的な理由

アンフェタミンやメタンフェタミンなどの覚醒剤は、報酬系とよばれる腹側被蓋野から側坐核に投射するドパミン神経系の、シナプス前終末からのモノアミン放出を促進し,かつMAOやモノアミントランスポーターを阻害することでモノアミンの再取り込みを阻害して、ドパミン遊離を増大し、覚醒、疲労感減尐,気分高揚,多幸感,食欲減退などの薬理作用を発現する。この作用を期待して反復使用するうちに、多幸感,陶酔感などの作用には耐性が形成される一方、依存症となる。ひとたび依存が形成されると、脳機能に不可逆的な障害が生じ、統合失調症様の幻覚,妄想,錯乱などの症状が発現する。これらの症状は投与回数に伴って逆耐性を形成し、症状はさらに強まる。また使用を中止しても、脳は不可逆的な障害を受け、何らかの刺激によって突然症状が再燃し(フラッシュバック)、一生続くとされる。このように薬理学的作用から見ても、人体への影響は大きく、従って覚せい剤を使用してはならない。


④ 覚醒剤以外の乱用薬物

局所麻酔薬であるコカインはモノアミンの取り込みを阻害し、高揚感・疲労感の低下などの中枢興奮作用を示し、強い精神依存を引き起こす。逆耐性が生じ、同量の薬物に対する反応は次第に増強する。大麻は煙草をマリファナ、樹脂をハッシシと呼び、大麻にはTHCを始めとする80種類以上のカンナビノイドが含まれ、カンナビノイド受容体(CB1)に作用する。内因性物質としてアナンダミドや2-AGがあり、カンナビノイド受容体は海馬や皮質など脳内や末梢に幅広く分布し、シナプスでは前シナプスにCB1受容体が存在し負のフィードバックをもたらしている。大麻により短期記憶障害や複雑な作業の実施能力低下などの症状が現れ、長期使用により、呼吸機能低下やカタレプシーなどの作用を示す。依存性は低く、離脱症状を呈することは稀であるが、endpointがなく安全ではない。5-HT2受容体を遮断し5-HT1A,5-HT1C受容体に作用するLSD(リセルグ酸)やNMDA受容体拮抗作用をもつフェンサイクリジン(PCP)は幻覚を発現する。LSDはフラッシュバックを起こしやすい。その他、有機溶媒などさまざまな薬物が乱用されている。


⑤ 薬物乱用

☆簡単に手に入る、身近になり罪悪感が低下→取り締まりの強化。特にネット上
☆「大麻はたばこより中毒性が低く、酒より安全」等の誤った情報、ないし無知 、正確な知識の不足
→学校での教育の徹底。手を染める時期と重なり、有効。
☆倫理観の欠如→社会全体の啓発
☆やせ薬など、別の形態として使用→信頼性のない薬には十分注意する
☆周囲の無関心
☆犯罪組織の利益源となる(売る側の立場)←依存性
☆DDSの改良により加熱吸入など簡単に摂取できるようになった
☆「自分の健康は自分で守る」という意識が大切



⑥ 薬理作用・臨床適用・副作用

B:カフェイン

大脳皮質や延髄中枢の興奮を起こし、アデノシン受容体拮抗作用による覚醒作用がある。またホスホジエステラーゼ阻害によって細胞内cAMPが増大する。この結果、心筋収縮力が増大,気管支拡張,胃酸分泌増大が起こる。また、腎血管が拡張することで、糸球体濾過量が増大し,尿細管再吸収が減尐するため、利尿が起こる。鎮痛目的として、頭痛薬や風邪薬に配合される。副作用としては、弱い依存性・不眠・精神興奮・感情障害・骨格筋緊張・振戦・頻脈・呼吸促進があり、禁断することで傾眠・イライラ感・頭痛が起こる。

F:メタンフェタミン

報酬系のドパミン神経系への作用によって、ノルアドレナリンやドパミンを遊離し、モノアミントランスポーターを阻害して、モノアミンの再取り込みを阻害する。また、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害によって、モノアミンの分解を阻害する。これらの作用により、シナプス間隙モノアミン濃度を高め、強い亣感神経興奮作用と中枢興奮作用を発現する。ナルコレプシーやうつ病などが適応症であるが、治療目的ではほとんど使用されない。覚醒剤であり、依存性が強く、人体に大きな影響がある。

H: MDMA

上記メタンフェタミンでの作用に加え、シナプス間隙のセロトニン量をとくに増大することで、多幸感などの作用を発現する。ナルコレプシーに対してのみ臨床適用され、うつ病への処方は廃止された。アメリカではADHD (注意欠陥・多動障害)にも使用される。習慣性・ドパミン増大による統合失調症様精神興奮症状・フラッシュバックなどの副作用がある。




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