2013年3月29日金曜日

【海を見る自由】


【海を見る自由】

2011年3月24日、あの日の約2週間後に発表されたもの。
高校卒業生に向けた校長先生からのメッセージ。

大学だけが学ぶところじゃない。
友人を得るためなら、社会人になる方が近道かもしれない。
大学はエンジョイために行く場所でもない。

では、何のために大学に行くのか?



❝大学に行くとは、「海を見る自由」を得るためなのではないか。
 言葉を変えるならば、「立ち止まる自由」を得るためではないかと思う。現実を直視する自由だと言い換えてもいい。❞


❝時に、孤独を直視せよ。海原の前に一人立て。自分の夢が何であるか。海に向かって問え。青春とは、孤独を直視することなのだ。直視の自由を得ることなのだ。大学に行くということの豊潤さを、自由の時に変えるのだ。自己が管理する時間を、ダイナミックに手中におさめよ。流れに任せて、時間の空費にうつつを抜かすな。❞


❝真っ正直に生きよ。くそまじめな男になれ。一途な男になれ。貧しさを恐れるな。男たちよ。船出の時が来たのだ。思い出に沈殿するな。未来に向かえ。別れのカウントダウンが始まった。忘れようとしても忘れえぬであろう大震災の時のこの卒業の時を忘れるな。❞



「学生時代にしか出来ないこと」をやっておきな。

とは再三言われてきた言葉。

ふらっと海を見に行くとか、そーいうことなのかもしれません。


http://niiza.rikkyo.ac.jp/news/2011/03/8549/

2013年3月23日土曜日

秘密保持について

自分がネットで集めた情報等を元にこうした書き込みをしているので、口が軽い(orウワサ好きな)印象を持たれるのは避けるべく、「秘密保持」に関しては気を付けるようにしています。

そして今回、契約上破ると解雇や訴訟に至るであろう「企業秘密」「営業秘密」について調べてみました。
この感覚を個人間の秘密に当てはめるのは乱暴ではありますが、大方の方向性はずれていないのではないでしょうか。
大切なのは「他の人に迷惑をかけない」ことだと思います。



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以下、下記リンク先を基に作成。
http://www.computerworld.jp/topics/653/180590?page=0%2C0

【営業秘密として不正競争防止法の保護を受けるための3つの要件】
(1)秘密として管理されていること(秘密管理性)
(2)有用な情報であること(有用性)
(3)公然と知られていないこと(非公知性)


(1)秘密管理性が認められるための2つの条件
(a)情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス制限)
(b)情報にアクセスした者にそれが秘密であると認識できること(客観的認識可能性)

(2)「有用性がある」とは、下記2つのどちらかを満たすものをいう
(a)情報を利用することで事業者に直接利益をもたらすもの
(b)費用の節約や経営効率の改善など、間接的に利益をもたらすもの

(3)非公知性について
その営業秘密を保有する事業者の管理下以外では一般に入手することができないもの
※文献やWebから簡単に入手できるような情報には非公知性がない
※※複数の主体が知っていても、それらの主体に守秘義務が課されているため知れ渡っていないような場合には、非公知情報にあたる



http://www.computerworld.jp/topics/653/180590?page=0%2C0
「企業機密」を保護する法的手段とは――営業秘密管理指針の改訂
www.computerworld.jp

2013年3月20日水曜日

マグロについて。

本鮪(クロマグロ)
キハダマグロ→消費量の40%
メバチマグロ
みなみマグロ→消費量の2%

2013年3月19日火曜日

「情報の非対称性を崩す」ところにお金が発生する

「情報の非対称性を崩す」ところにお金が発生する

教育業界、不動産業界、保険業界、通信業界、探偵業界、コンサル業界、データベース業界、婚活業界、人材紹介業界、マスコミ業界、出版業界。

「情報とお金の交換」は、様々なところで行われている。
知識欲を狙った産業は少なくないと感じる。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/732fe89a770ffcb52c76eebccc2dd46a

デキサメタゾン


【副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド)・デキサメタゾン】ステロイド系抗炎症薬
抗炎症・抗アレルギー、免疫抑制、諸代謝作用
※「デカドロン」という名前で、消化器症状(悪心・嘔吐)に対処する薬としても使われている。

《作用機序》
ステロイド系抗炎症薬の作用機序には、遺伝子を介するもの(genomic effect)と遺伝子を介さないもの (nongenomic effect) がある。ステロイド骨格を有するステロイド製剤は親水性の性質と親油性の性質を有する(両親媒性)ため細胞膜を透過しやすく、血中から末端組織に容易に移行する。

<遺伝子を介する作用>
ステロイド系抗炎症薬は、天然のグルココルチコイド(副腎皮質ホルモンの一種)あるいはその合成アナログであることから、細胞内に入った後、細胞質に存在するステロイド受容体(細胞質内ステロイド受容体cGCR)であるグルココルチコイド受容体(GRα; Glucocorticoid Receptor α) と結合する。GRαは本来副腎皮質から分泌される内因性のグルココルチコイド(ヒドロコルチゾン)に対する受容体であり、通常 heat shock protein 90 をはじめとしたシャペロンと結合して薬物(生体内ではグルココルチコイド)と結合しやすい構造に保持されている。薬物の結合により hsp90 が受容体から解離し、GRαは2量体を形成し、核内に移行する。GRαをはじめとしたステロイド受容体スーパーファミリーに属する分子はリガンドに対する受容体として働く一方、それ自身がDNAと相互作用する転写因子としての性質を持つ。DNAにはGRαと結合するための配列(glucocorticoid responsive element; GRE, GGTACAnnnTGTTCT) が存在している。
DNAはヒストンと呼ばれるタンパク質に巻きついていることが知られているが、何らかの刺激により遺伝子が活性化するとヒストンがアセチル化を受け、DNAの巻きつき方が緩むことにより転写因子と相互作用しやすい状態になる。つまり遺伝子の発現調節はヒストンのアセチル化状態によりコントロールされている。GRαがDNAに結合するとヒストンアセチル基転移酵素(Histone Acetyl Tranceferase; HAT) 活性を持った蛋白質が結合してきてヒストンをアセチル化することによりクロマチン構造の一部を解き、抗炎症蛋白質遺伝子の転写を亢進する。
一方、グルココルチコイドが結合したGRαは単量体でも作用しうる。薬物と結合したGRαは核内に移行するとヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC、Histone Deacetylase) を引き連れて活性化した炎症性蛋白質のmRNAをコードする遺伝子の抑制を行う。具体的には炎症性蛋白質遺伝子の転写に関与する転写因子NF-κBにGRαとHDACの複合体が結合した後2つの経路により転写を抑制する。1つはGRαが直接NF-κBの活性を抑制する経路、もう1つはGRαがつれてきたHDACによりヒストンの脱アセチル化が生じ、転写抑制を起こす経路である。
グルココルチコイドにより産生が亢進される抗炎症蛋白質にはlipocortin、interleukin-1 receptor antagonist、β2受容体、IκBなどがある。
グルココルチコイドにより産生が抑制される蛋白質には種々の炎症性サイトカインやケモカイン、細胞接着分子などがある。
グルココルチコイドは上記に述べた抗炎症作用以外にも肝臓での糖新生にも関与している他、ミネラロコルチコイド受容体に対してもリガンドとして結合して作用を発現するため、これらの経路は副作用の発現に寄与している。

<遺伝子を介さない作用>
不明な点も多いが、大量療法、ステロイドパルス療法で関与していると考えられている。細胞膜上ステロイド受容体(mGCR)を介した遺伝子を介さない作用の他、非特異的な作用もあると考えられており、いずれも抗炎症作用、免疫調整作用などに関与すると考えられている。大量療法やステロイドパルス療法では遺伝子を介した作用では説明ができない速さで効果が発現すること、GRが飽和する量以上投与しても用量依存性に効果が認められることから存在すると考えられている。

ホリゾン


【ジアゼパム】ベンゾジアゼピン系抗不安薬、抗痙攣薬、鎮静薬(睡眠薬:国外)
《ジアゼパムの作用機序》
動物では、ジアゼパムは大脳辺縁系、ならびに視床と視床下部に作用して鎮静作用をもたらす。このとき、特異的なベンゾジアゼピン受容体に結合するが、この受容体は、実際の構造としてはGABA(γ-アミノ酪酸)受容体(より正確には、GABAA受容体-Clチャネル複合体)の一部分(α部位)である。この受容体にジアゼパムが結合すると、GABAの持つ抑制作用が増強される。ジアゼパムは全身組織、ことに脂肪組織に再分布し、ベンゾジアゼピン受容体の誘導(発現増強)も引き起こす。人間では、鎮静作用に対する耐性は数週間以内に引き起こされるが、抗不安作用に対する耐性は誘導されない。

《ベンゾジアゼピンの作用機序》
中枢神経系では神経伝達物質として、アミノ酸が多く分布している。主な神経作用性のアミノ酸としては興奮アミノ酸であるグルタミン酸、抑制アミノ酸であるGABAが有名である。グルタミン酸受容体(ナトリウム、カルシウムイオンチャネル)としてはイオンチャネル型受容体であるAMPA受容体、NMDA受容体、カイニン酸受容体がよく知られており、代謝型グルタミン酸受容体としてはmGluRが知られている。GABA受容体ではイオンチャネル型であるGABAA受容体(クロールイオンチャネル)とGタンパク共役型受容体であるGABAB受容体が知られている。
GABAA受容体にはリガンドであるGABA結合部位の他にバルビツール酸系結合部位、ベンゾジアゼピン結合部位、糖質コルチコイド結合部位、ペニシリン結合部位、フロセミド結合部位、フルマゼニル結合部位が知られており、GABAとの反応性の調節を行っている(ペニシリンはGABAアンタゴニストのように振舞うのはこのためである)。
ベンゾジアゼピン系はGABAA受容体と結合するとチャネルの開口頻度を増加させる。バルビツレートと異なり、開口時間を延長せず、高用量負荷してもアゴニスト活性をもたない。その点でバルビツレートよりも安全性が高いと考えられ、抗不安薬、睡眠薬、抗てんかん薬、筋弛緩薬として使用される。ベンゾジアゼピンがクロールチャネルの開口頻度をあげるメカニズムとしてはGABAとGABAA受容体との結合親和性を高めるためと考えられている。言い換えると、GABAの濃度―作用曲線を左にシフトすることとなる。
GABAA受容体の主な作動薬といえばバルビツレートとベンゾジアゼピンであるが、バルビツレートはGABAの最大効力をあげるのに対してベンゾジアゼピンは用量効力をあげると考えられている。
ベンゾジアゼピン受容体には3つのサブタイプが知られている。それは中枢性のω1,ω2および末梢性のω3である。殆どのベンゾジアセピンがω1,ω2を区別しない。ω1が鎮静に関わり、ω2が認知、記憶、運動機能に関与すると考えられているが明らかになっていない。完全アゴニストがベンゾジアゼピン受容体の占有率に応じて、抗不安、抗けいれん、鎮静、健忘、運動失調、筋弛緩の順に発現すると考えられ、副作用が選択に出現しない部分アゴニストの開発が急がれていた。その結果、ゾピクロン(アモバン)やゾルピデム(マイスリー)といった非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が開発された。これらはω1には作用するものの、ω2には作用しないため鎮静作用が殆どで、抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用は弱くなっている。反跳性不眠や依存性もほぼなく、離脱症状も生じないため安全性がかなり高い。ベンゾジアゼピンの拮抗薬としてはフルマゼニル(アネキセート)が有名である。インバースアゴニスト(受容体の基礎活性を抑制する)としてはプロプラノールやアトロピンが知られている。

ラセナマイシン


【テトラサイクリン系抗生物質】グラム陽性・陰性菌に強く作用し、リケッチア、クラミジアにもすぐれた作用を示す。作用機序はたん白合成阻害であり、静菌的に作用する。
《詳細》
テトラサイクリンは微生物のリボゾームの30Sサブユニットに結合し、リボゾームに対してアミノアシルtRNA(アミノ酸の結合したtRNAの総称)が結合するのを阻害する。ある程度微生物への選択毒性があるが、マラリアへの抗菌力がある位であるので全く真核細胞リボソームに結合しない訳ではない。テトラサイクリンとリボゾームの結合は、原則として可逆的である。
テトラサイクリンは静菌的な薬剤で、微生物の増殖を阻止して殺菌は宿主の免疫系に任せる薬剤であるので、古典的には殺菌的な代替薬(例えばペニシリン)のある状況で、敗血症や重症感染症に用いるのは勧められていない。ただし、この区分は臨床的にそれほど重要で無い、と考える識者も存在する。

<適応菌種>
ドキシサイクリンに感性のブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌,淋菌,炭疽菌,大腸菌,赤痢菌,肺炎桿菌,ペスト菌,コレラ菌,ブルセラ菌,Q 熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ),クラミジア属
<適応症>
表在性皮膚感染症,深在性皮膚感染症,リンパ管・リンパ節炎,慢性膿皮症,外傷・熱傷および手術創等の二次感染,乳腺炎,骨髄炎,咽頭・喉頭炎,扁桃炎,急性気管支炎,肺炎,慢性呼吸器病変の二次感染,膀胱炎,腎盂腎炎,前立腺炎(急性症,慢性症),尿道炎,淋菌感染症,感染性腸炎,コレラ,子宮内感染,子宮付属器炎,眼瞼膿瘍,涙嚢炎,麦粒腫,角膜炎(角膜潰瘍を含む),中耳炎,副鼻腔炎,歯冠周囲炎,化膿性唾液腺炎,猩紅熱,炭疽,ブルセラ症,ペスト,Q 熱,オウム病

ミクロ経済学01


1       基礎概念と分析手法
1.1     経済分析の基本用語
1.2     経済循環
1.3     市場経済
1.4     数学的用語

2       消費者行動
2.1     選好と効用関数
2.2     効用最大化と需要
2.3     需要の変化と財の分類
2.4     変換の理論
2.5     相対性アプローチ
2.6     スルツキー方程式

3       企業行動
3.1     費用と供給
3.2     生産技術と費用
3.3     生産要素の需要
3.4     短期費用と長期費用
3.5     費用関数の性質
3.6     生産集合
3.7     生産集合と利潤

4       競争経済の均衡
4.1     市場均衡
4.2     市場調整
4.3     交換経済による競争均衡
4.4     生産経済による競争均衡

5       経済厚生
5.1     資源配分の効率性
5.2     厚生経済学の基本定理
5.3     経済厚生の基準
5.4     アローの定理

6       不完全競争
6.1     独占市場
6.2     クールノー均衡
6.3     シュタッケルベルク均衡
6.4     生産差別化と独占的競争
6.5     屈折需要関数
6.6     差別価格
6.7     交換経済のコア
6.8     極限定理

7       公共経済
7.1     消費者余剰と生産者余剰
7.2     経済厚生の指標
7.3     市場における課税の効果
7.4     公共財
7.5     リンダール均衡
7.6     外部性

8       不確実性
8.1     期待効用
8.2     危険に対する態度
8.3     保険と資産選択
8.4     不確実性下の市場均衡
8.5     モラル・ハザード
8.6     情報と期待
8.7     シグナリング
8.8     企業の資金調達

9       投入産出分析
9.1     産業連関表
9.2     レオンチェフ体系
9.3     行列乗数
9.4     一般化されたレオンチェフ体系

10    国際貿易
10.1  貿易の利益
10.2  公益の利益
10.3  生産物価格と要素価格
10.4  貿易のパターン

11    ゲームの理論
11.1  標準形ゲーム
11.2  2人ゼロ和ゲーム
11.3  展開形ゲーム
11.4  部分ゲーム完全均衡
11.5  繰り返しゲーム



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基礎概念と分析手法

経済とは、人々の活動の集まり
経済学は、そのような人々の経済活動と、それらが集まった経済全体の構造を分析する学問である。経済学を学ぶ目的は、経済の様々な諸現象を説明し理解することであり、その理解を現実経済に発生する色々な問題の解決のために役立てることである。



経済分析の基本用語

経済活動とは、財と生産の消費である。

財:商品、サービス、貨幣

経済主体:消費者と生産者に分類される
消費者:個人、家計
生産者:企業
特殊な経済主体:政府


市場:経済主体間の財の交換を可能とする機能を有する。価格が決定される場である。

マクロ経済学
巨視的な視点から経済全体の動きを問題とし、一国の生産活動の水準である国民総生産、雇用量、物価水準の変動などを分析する分野

ミクロ経済学
経済を構成する個々の家計や企業の行動を分析し、微視的な視点から経済を分析する分野

薬理について17(中枢興奮薬・覚醒剤・薬物依存)


① キサンチン誘導体について説明せよ。
② ニコチンと喫煙について説明せよ。
③ 覚醒剤を使用してはいけない薬理学的な理由について説明せよ。
④ 覚醒剤以外の乱用薬物について説明せよ。
⑤ 薬物乱用が若年層で増加している理由およびその対処法を考察しなさい。
大麻使用や所持の犯罪が増加している原因について説明せよ。
⑥ 次の薬物の薬理作用・臨床適用・副作用について説明せよ。





① キサンチン誘導体

キサンチン誘導体であるカフェイン、テオフィリン、テオブロミンは大脳皮質や延髄を興奮させ、呼吸抑制改善や疲労感の低下や思考力の回復をもたらす。これらの作用はホスホジエステラーゼ(PDE)阻害によるcAMP 増加、アデノシン受容体拮抗(A1 にはテオフィリンが拮抗し、A2a にはカフェインが拮抗する)や細胞内貯蔵Ca²⁺の遊離促進作用による神経伝達の亢進によりもたらされる。カフェインは中枢作用が強く、弱い身体的依存性があり、中止により傾眠・イライラ感・頭痛が起こる。また、テオフィリンやテオブロミンは末梢作用が強く、心臓促進・利尿作用・気管支拡張作用がある。

② ニコチンと喫煙

ニコチンは中枢と末梢のアセチルコリンニコチン受容体に対するさまざまな薬理作用と副作用を持つ。多幸感は得られないが依存性があり、側坐核でドパミンを遊離させ、連用中止でイライラ感・不安などの離脱症状が起こる。禁煙補助としてニコチンガムやニコチンパッチおよびニコチン受容体部分活性薬が使用される。また、ニコチンは認知症やアルツハイマー病に効果があると考えられている。先進国では教育により喫煙率が低下していて、日本でも喫煙率は年々低下しているが、日本では若い女性の喫煙率は横ばいかむしろ上昇傾向で、未成年者の喫煙が相変わらず多い。喫煙への嗜癖はアルコールやヘロインよりも高く、吸入後にすぐに効果が現れるので、強化されやすく、吐き気やめまいなどの即時効果には喫煙継続により強い耐性ができる。喫煙と発ガン率は相関関係にあり、呼吸器系・循環器系・消化器系などの疾患のリスクファクターとなる。また、胎児への影響や受動喫煙の問題も深刻となっている。



③ 覚醒剤を使用してはいけない薬理学的な理由

アンフェタミンやメタンフェタミンなどの覚醒剤は、報酬系とよばれる腹側被蓋野から側坐核に投射するドパミン神経系の、シナプス前終末からのモノアミン放出を促進し,かつMAOやモノアミントランスポーターを阻害することでモノアミンの再取り込みを阻害して、ドパミン遊離を増大し、覚醒、疲労感減尐,気分高揚,多幸感,食欲減退などの薬理作用を発現する。この作用を期待して反復使用するうちに、多幸感,陶酔感などの作用には耐性が形成される一方、依存症となる。ひとたび依存が形成されると、脳機能に不可逆的な障害が生じ、統合失調症様の幻覚,妄想,錯乱などの症状が発現する。これらの症状は投与回数に伴って逆耐性を形成し、症状はさらに強まる。また使用を中止しても、脳は不可逆的な障害を受け、何らかの刺激によって突然症状が再燃し(フラッシュバック)、一生続くとされる。このように薬理学的作用から見ても、人体への影響は大きく、従って覚せい剤を使用してはならない。


④ 覚醒剤以外の乱用薬物

局所麻酔薬であるコカインはモノアミンの取り込みを阻害し、高揚感・疲労感の低下などの中枢興奮作用を示し、強い精神依存を引き起こす。逆耐性が生じ、同量の薬物に対する反応は次第に増強する。大麻は煙草をマリファナ、樹脂をハッシシと呼び、大麻にはTHCを始めとする80種類以上のカンナビノイドが含まれ、カンナビノイド受容体(CB1)に作用する。内因性物質としてアナンダミドや2-AGがあり、カンナビノイド受容体は海馬や皮質など脳内や末梢に幅広く分布し、シナプスでは前シナプスにCB1受容体が存在し負のフィードバックをもたらしている。大麻により短期記憶障害や複雑な作業の実施能力低下などの症状が現れ、長期使用により、呼吸機能低下やカタレプシーなどの作用を示す。依存性は低く、離脱症状を呈することは稀であるが、endpointがなく安全ではない。5-HT2受容体を遮断し5-HT1A,5-HT1C受容体に作用するLSD(リセルグ酸)やNMDA受容体拮抗作用をもつフェンサイクリジン(PCP)は幻覚を発現する。LSDはフラッシュバックを起こしやすい。その他、有機溶媒などさまざまな薬物が乱用されている。


⑤ 薬物乱用

☆簡単に手に入る、身近になり罪悪感が低下→取り締まりの強化。特にネット上
☆「大麻はたばこより中毒性が低く、酒より安全」等の誤った情報、ないし無知 、正確な知識の不足
→学校での教育の徹底。手を染める時期と重なり、有効。
☆倫理観の欠如→社会全体の啓発
☆やせ薬など、別の形態として使用→信頼性のない薬には十分注意する
☆周囲の無関心
☆犯罪組織の利益源となる(売る側の立場)←依存性
☆DDSの改良により加熱吸入など簡単に摂取できるようになった
☆「自分の健康は自分で守る」という意識が大切



⑥ 薬理作用・臨床適用・副作用

B:カフェイン

大脳皮質や延髄中枢の興奮を起こし、アデノシン受容体拮抗作用による覚醒作用がある。またホスホジエステラーゼ阻害によって細胞内cAMPが増大する。この結果、心筋収縮力が増大,気管支拡張,胃酸分泌増大が起こる。また、腎血管が拡張することで、糸球体濾過量が増大し,尿細管再吸収が減尐するため、利尿が起こる。鎮痛目的として、頭痛薬や風邪薬に配合される。副作用としては、弱い依存性・不眠・精神興奮・感情障害・骨格筋緊張・振戦・頻脈・呼吸促進があり、禁断することで傾眠・イライラ感・頭痛が起こる。

F:メタンフェタミン

報酬系のドパミン神経系への作用によって、ノルアドレナリンやドパミンを遊離し、モノアミントランスポーターを阻害して、モノアミンの再取り込みを阻害する。また、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害によって、モノアミンの分解を阻害する。これらの作用により、シナプス間隙モノアミン濃度を高め、強い亣感神経興奮作用と中枢興奮作用を発現する。ナルコレプシーやうつ病などが適応症であるが、治療目的ではほとんど使用されない。覚醒剤であり、依存性が強く、人体に大きな影響がある。

H: MDMA

上記メタンフェタミンでの作用に加え、シナプス間隙のセロトニン量をとくに増大することで、多幸感などの作用を発現する。ナルコレプシーに対してのみ臨床適用され、うつ病への処方は廃止された。アメリカではADHD (注意欠陥・多動障害)にも使用される。習慣性・ドパミン増大による統合失調症様精神興奮症状・フラッシュバックなどの副作用がある。




薬理について16(非ステロイド性抗炎症薬・解熱鎮痛薬)


① NSAIDおよびステロイド性抗炎症薬の薬理学的特徴について説明せよ。
② NSAID・解熱鎮痛薬についてその抗炎症作用を比較しながら説明せよ。


① NSAIDおよびステロイド性抗炎症薬の薬理学的特徴

NSAIDの殆どは、シクロオキシゲナーゼ(COX)の疎水性チャネルを封鎖することで、基質のアラキドン酸の結合を阻害し、プロスタグランジン(PG)やトロンボキサン(TX)産生を抑制する。PGは、末梢血流を増加させることで炎症症状の発現に関与したり、知覚神経終末にはたらいて痛覚過敏を起こしたり、発熱を招来したりする作用があるので、PG産出抑制によって消炎,鎮痛,解熱作用が発現する。一方PGは止血,胃粘膜保護,腎血流維持も司っているので、PG抑制によって出血傾向,胃潰瘍・消化器障害,腎障害などの副作用も現れる。なお、病的状態に関与するPGの生合成は誘導型のCOX-2が担うので、COX-2の選択性が高い薬は副作用が比較的小さい。しかし、COX-2選択的阻害薬は心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めることも分かっている。ステロイド性抗炎症薬は、細胞内で核内受容体と結合し、炎症性サイトカインやPG,各種インターロイキン(IL)の転写を抑制することで、結果的に抗炎症作用をもたらす。


② NSAID・解熱鎮痛薬

代表的な抗炎症薬であるアスピリンは小腸で加水分解されサリチル酸として吸収され、COXをアセチル化することにより阻害する。COX阻害とは異なる機序により抗リウマチ作用も持つ。消化器障害や腎・肝障害などの副作用があり、小児インフルエンザへの使用は禁忌である。アセトアミノフェンはCOX阻害が弱く、アスピリンに匹敵する解熱・鎮痛作用を持つが抗炎症作用はない。小児に対しても第一選択薬であり、解熱作用は中枢のCOX-3阻害によると考えられている。インドメタシンは強力な抗炎症作用(アスピリンの20~30倍)を持つ。関節リウマチや痛風発作にも有効だが、副作用も強い。主に外用として使用される。イブプロフェンはアスピリンとインドメタシンの中間の効力を持ち、胃腸障害などの副作用が比較的尐ない。類似化合物としてロキソプロフェン(ロキソニン)がある。ジクロフェナク(ボルタレン)は強力な解熱消炎鎮痛作用(抗炎症作用はインドメタシンよりも強い)を持つ。小児・高齢者には作用が強く出ることがあり、アナフィラキシー様ショックにも注意が必要である。主に坐剤として使用される。スリンダクはスルフィド体となって消炎鎮痛作用(抗炎症作用はインドメタシンの1/2以下)を示すプロドラッグである。プロドラッグであるため、胃腸障害や腎障害が尐ないため、腎機能低下時にも有効である。エトドラクはCOX-2選択的阻害作用が強く、胃腸障害や腎障害が尐ない。また、抗炎症作用の強さは、ジクロフェナク>インドメタシン>イブプロフェン>スリンダク>アスピリンの順である。

薬理について15(痛覚と麻薬性鎮痛薬)


① 痛覚のユニークな特徴と痛みの部位による分類について説明せよ。
② 痛みの受容と痛覚過敏について説明せよ。
③ ある種の薬が生体に著効を示すことから、生体内に同様の物質や受容体が存在することが明らかになることがある。中枢神経系における例を挙げ、説明せよ。
④ モルヒネの鎮痛作用機序・臨床適用・副作用について説明せよ。
⑤ モルヒネ以外の麻薬性鎮痛薬について説明せよ。



① 痛覚のユニークな特徴と痛みの部位による分類

痛覚は生命維持に必須であり、慣れや順応がなくむしろ閾値が下がって痛覚過敏になることがある・中枢性の痛覚抑制システムが存在する・心臓の痛みを上腕の痛みと誤認知したり、因頭神経の刺激をこめかみの痛みと誤認知したり(アイスクリーム頭痛)と、内臓や深部組織の痛みが体表に放散して生じる関連痛がある・疼痛の原因が除去されても痛みが残ることがある、などのユニークな特徴を持つ。痛みは部位により、体表の痛みで鋭く短い一次性疼痛と遅く持続性の二次性疼痛がある表在痛、筋・関節などの鈍くうずくような痛みで局在は不明瞭な深部痛、平滑筋の強縮が原因の内臓痛、頭蓋血管の過拡張や炎症関連発痛物質により血管周囲の知覚神経が刺激されることにより起こる頭痛に分類される。痛みは本来、生体に対する警告系としての機能を果たしているが、過剰で持続的な痛みは除去しなければならない。


② 痛みの受容と痛覚過敏

痛みを生じる侵害刺激は知覚神経の自由終末である侵害受容器によって受容される。侵害受容器は機械・温度・化学刺激なども受容する。侵害刺激がある閾値を越えると痛覚として伝えられ、受容器の放出した神経伝達物質が神経細胞のシナプスに受容された後、この刺激がマスト細胞に伝えられると、マスト細胞がヒスタミンを放出して再び神経細胞のシナプスに受容される。このように痛覚には増幅のメカニズムがある。一次侵害求心線維にはC線維やAδ線維があり、脊髄後角の神経に投射し、痛覚伝導路としては脊髄視床路がある。C線維はカプサイシンの作用するV1R・AMPA・NMDA・GABAAなどの受容体を持ち、神経伝達物質としてサブスタンスPとグルタミン酸を使用している。Aδ線維は神経伝達物質としてグルタミン酸を使用している。炎症などにより痛覚閾値が低下すると痛覚過敏となる。プロスタグランジンやロイコトリエンは侵害受容器に直接作用しないが感作させ、炎症部位でのインターロイキン産生やNGFも痛覚過敏に関与している。非侵害性の痛み以外の刺激で痛みの感覚が出るアロジニアは治療が難しい。



③ オピオイド受容体とオピオイドペプチド

米国南北戦争で負傷した兵士にモルヒネを大量に投与し、モルヒネ依存が社会問題になり、依存のない数多くの鎮痛薬が作られた。それらには立体特異性が存在し、構造の一部を変換することにより拮抗作用を示す化合物が合成された。こうした事実から、1972年頃、薬物受容体の最初の概念が導入され、内因性モルヒネ様物質の発見へとつながった。
オピオイド受容体はGPCRで、Kチャネルを活性化しCaチャネルを抑制する。オピオイド受容体には、鎮痛・鎮咳・縮瞳・多幸感などに関わるμ受容体、弱い鎮痛・依存性に関わるδ受容体、鎮痛・多幸感・消化管運動抑制に関わるκ受容体がある。初めて発見された内因性のオピオイドペプチドはメチオニンエンケファリンおよびロイシンエンケファリンである。これらは主にδ受容体に作用する。他のオピオイドペプチドには主にκ受容体に作用するダイノルフィンA、μ・δ受容体に作用するβ-エンドルフィン、オーファン受容体に作用するノイセプチンがある。


④ モルヒネの鎮痛作用機序

モルヒネは運動中枢や知覚にほとんど影響を与えない用量で痛覚求心路を選択的に遮断し強力な鎮痛作用を示す。中脳水道周囲灰白質,延髄傍巨大細胞網様核に作用し、脊髄後角への下行性痛覚抑制経路の活動を亢進する。また、一次知覚神経C線維の侵害受容器を過分極させることで痛みの入力を阻害する。さらに、脊髄後角に作用し、一次知覚神経からの伝達物質遊離の抑制(シナプス前抑制)と、二次知覚神経の活動抑制(シナプス後抑制)によって、痛みの伝達を阻害する。腸管への作用でAChの遊離が抑制され、消化管運動が抑制し、胃液・胆汁・膵液の分泌も抑制するため止瀉作用がある。鎮咳作用があり、縮瞳を起こす。これらの作用は、オピオイド受容体の主にμ受容体への結合を介する。μ受容体に結合すると、Ca2+チャネルの開口が抑制されて神経伝達物質のグルタミン酸やサブスタンスPの放出量が減尐する。また、K+チャネルの開口が促進され、K+が細胞外に流出し、膜電位が過分極する。長期投与は耐性や依存性の発現が問題になるため、癌性疼痛、術後痛痛、心筋梗塞疼痛に臨床適用されている。延髄の化学受容器引金帯(CTZ)のD2受容体を刺激することで嘔吐中枢に情報が伝わり、悪心・嘔吐を起こし、延髄呼吸中枢を抑制し呼吸抑制を生じるなどの副作用がある。


⑤ モルヒネ以外の麻薬性鎮痛薬

リン酸コデインの鎮痛作用はモルヒネの1/6だが、鎮咳作用は強く鎮咳薬としても使用されている。腸管運動抑制が軽度で小児にも適応でき、依存性形成の可能性は低い。フェンタニルはμ受容体作動薬で、モルヒネの約100倍の鎮痛作用を持ち、脂溶性が高く経皮投与が可能である。持続時間はモルヒネより短い。メサドンはμ受容体作動薬で、ラセミ体ではモルヒネと同程度の鎮痛作用を持つ。モルヒネ慢性中毒の置換療法に使用され、弱いNMDA受容体拮抗作用がある。ブプレノルフィンはμおよびκ受容体部分的作動薬で、強い鎮痛作用を持つ。術後や癌の鎮痛に筋注または坐剤を投与する。弱い依存性がある。ナロキソンはオピオイド受容体拮抗薬(μが強い)で、麻薬による呼吸抑制および覚醒遅延に拮抗する。ナロキソン自身には呼吸抑制作用、瞳孔縮小作用、鎮静・鎮痛作用はない。


薬理について14(パーキンソン病治療薬)


① パーキンソン病の特徴と症状およびパーキンソン病とドパミン神経系の異常について説明し、その原因を考察しなさい。
② MPTPについて説明せよ。
③ パーキンソン病治療薬を作用機序により分類して説明せよ。
④ セロトニンやドパミンが興奮性神経伝達物質と呼ばれない理由について説明せよ。
⑤ ドパミン神経系について以下の設問に答えなさい。
(1) ドパミンの化学構造式を書きなさい。
(2) 脳内のドパミン作動性神経系の種類と役割および臨床応用について説明せよ。
(3) ドパミン受容体の作動薬と拮抗薬の薬理作用および臨床応用について説明せよ。
(4) ドパミンの生合成経路および神経終末から遊離されたドパミンがたどる運命を説明せよ。



① パーキンソン病の特徴と症状およびパーキンソン病とドパミン神経系の異常とその原因

パーキンソン病はパーキンソン医師により報告された原因不明の進行性運動機能障害であり、静止時の振戦、筋硬直、無動、姿勢反射障害の四大症状が見られる。病理所見では、中脳の黒質緻密部のドパミン作動性神経系の変性・脱落に加えて、投射先の線条体・淡蒼球でのドパミン・ドパミントランスポーター量の低下も低下し形態が変化しLewy小体が出現している。線条体から黒質網状層・淡蒼球内節までの経路は、直接経路と間接経路との2つに分けられる。直接経路は、D1受容体を介した経路で、視床の脱抑制に作用して、運動を促進する。これに対して、間接経路はD2受容体を介した経路で、視床を抑制することで、運動を抑制する。パーキンソン病では、ドパミン作動性神経系が減弱してGABA神経系が亢進することで、視床が抑制されていると考えられる。ドパミン神経系の異常の原因は、TIQ(テトラヒドロイソキノロン)などの神経毒や、MAO-Bにより過酸化水素が生成されることからフリーラジカルが関与していると考えられている。


② MPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine)

アメリカの若者が麻薬ペチジンを密造する過程で、誤ってMPTPを合成してしまって不純物として混入し、このMPTP入り麻薬を注射したところ、重篤なパーキンソン様症状を発現した。これは、MPTPが脳内移行後グリア細胞のモノアミン酸化酵素(MAO-B)によってMPP+に変換され、ドパミン神経に取り込まれて毒性を発揮したためである。このことから、パーキンソン病は生体内にMPTP様の黒質-線条体ドパミン神経を選択的に障害する内因性または外因性神経毒が蓄積することで生じるというドパミン神経毒説が生まれた。


③ パーキンソン病治療薬の作用機序による分類

パーキンソン病の治療薬は、主にドパミン作動性神経系を亢進するものである。レボドパはドパミンの前駆体で、ドパミンと違って血液脳関門を通ることができる。最初の数年は、症状全般、特に運動緩徐に有効であるが、その効果は徐々に減弱する。カルビドパと合わせて服用しないと末梢作用を引き起こし、悪心・嘔吐、不整脈などが副作用となる。多くの患者に有効だが、長期使用によりwearing off現象やdelayed on現象、on and off現象が現れる。カルビドパは、血液脳関門を通らないL-アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬で、末梢でのレボドパ代謝を抑制し、脳内濃度を高めることができる。末梢の副作用は抑制できるが、中枢への副作用は増加する。ブロモクリプチンはD2受容体の選択的作動薬で、レボドパ投与時に効果が減弱したときに併用する。プラミペキソールはD3受容体の選択的作動薬で、神経保護作用があり、単独で使用するか、レボドパと併用する。このブロモクリプチンとプラミペキソールは、症状が進行し、ドパミン作動性神経が著しく変性・脱落している患者に使用する。セレギリンはMAO-Bを阻害して、ドパミンの代謝を抑制する。副作用には悪心・嘔吐、肝障害などがある。ドロキシドパは、脳内でノルアドレナリンとなる。パーキンソン病の症状が進行すると、ノルアドレナリンも減尐する。すくみ現象や無動に有効で、副作用には悪性症候群・白血球減尐などがある。アマンタジンは、ドパミンの遊離を増大し、再取り込みを抑制する。副作用には不眠、うつなどがあり、ドパミン作動性神経がある程度残存している患者に有効である。トリヘキシフェニジルは、抗コリン薬である。ドパミン系薬の効果のない抗精神病薬による錐体外路系障害に有効である。副作用は口渇・便秘などの末梢性コリン作用である。


④ セロトニンやドパミンが興奮性神経伝達物質と呼ばれない理由

セロトニン・ドパミン作動性神経系はいずれも、神経伝達を直接担うのではなく、イオンチャネルの開き具合などを調節する調節系としてはたらくから。


⑤ ドパミン神経系



(1)

(2)
●報酬系
中脳の腹側被蓋野(VTA)から大脳皮質や側坐核に投射するドパミン神経系。欲求が満たされた時に活性化し、快感を与える。覚せい剤は、この報酬系のシナプス前終末からのドパミン放出を促進,かつ再取り込みを阻害することでドパミン過剰を引き起こし、薬物中毒を引き起こす。またドパミン仮説によれば、統合失調症陽性症状は中脳辺縁系(腹側被蓋野-側坐核)でのドパミン過剰が関与しているとされる。
●黒質-線条体路
黒質緻密部から線条体に投射するドパミン神経系。線条体から出力されるGABA神経を抑制する。パーキンソン病では、線条体で放出されるドパミンが不足し、相対的にAChによる作用が高まるためにGABA神経系機能が亢進することによって生じるとされる。


(3)
作動薬…ブロモクリプチンはドパミンD2受容体選択的アゴニストで、ドパミン神経系を賦活することで錐体外路症状を改善する、パーキンソン病治療薬である。
拮抗薬…ハロペリドールは中脳辺縁系のドパミンD2受容体を選択的に遮断することで、妄想,幻覚といった陽性症状を改善する、統合失調症治療薬である。


(4)
神経終末に能動輸送で取り込まれたチロシンは細胞質でチロシン水酸化酵素によりドーパーに変換される。チロシン水酸化酵素が全体の律速段階である。その後、ドーパーはL-アミノ酸脱炭酸酵素によりドパミンまで変換され、小胞内に取り込まれる。ドパミン神経系にはノルアドレナリン神経系とは異なりドパミンヒドロキシラーゼが含まれていないので、小胞内では変換されない。この過程はチロシン水酸化酵素の活性や量の調節により制御されている。遊離されたドパミンはドパミントランスポーターにより神経終末に再取り込みされるか、MAOやCOMTにより代謝されHVAに変換される。


⑥ 薬理作用・臨床適用・副作用
J:レボドパ
血液脳関門を通過後、脳内でドパミンに変換されることで、抗パーキンソン作用を発現する。臨床的には、パーキンソン病治療薬として血液脳関門を通らないL-アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬であるカルビドパと併用する。長期服用によって、①On-off現象(症状の突然の増悪)②Wearing-off(薬効持続時間が短縮)③delayed on現象(効果発現が遅延)④不随意運動(ジスキネジア)といった副作用が見られる。また、体内に取り込まれたレボドパのうち95%以上は末梢で代謝を受けドパミンになり、さらに一部NAやアドレナリンに変換されて生理活性を現し、副作用を生じる。具体的には、悪心,嘔吐,食欲不振,起立性低血圧,不整脈,頻脈,不眠,幻覚など。L-アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬と同時併用せずに単剤で使用すると、副作用は顕著になる。























薬理について13(統合失調症治療薬)


① 統合失調症の特徴と症状について説明せよ。
② 統合失調症とドパミン神経系の異常について説明せよ。
③ 統合失調症治療薬を作用機序により分類して説明せよ。
④ 統合失調症に対するドパミンD2 受容体拮抗薬の有効性と限界について述べなさい。その限界に対処するために用いられるようになった治療薬を2 種類以上挙げ、知るところを述べなさい。




① 統合失調症の特徴と症状

統合失調症の症状は陽性症状と陰性症状,認知症状に大別される。陽性症状では、思考障害や妄想、幻覚が現れ、陰性症状では、思考・会話の貧困、感情平板化、意欲の低下、社会性欠如などが現れる。また、認知症状では、注意保持困難、精神運動機能の遅延、問題解決能力の低下などが現れる。思春期から青年期に発症し、数年かけて進行するが、本人の病識は低い。初期症状としては、周囲からの遊離、社会ルールの不履行、感情鈍麻などがある。統合失調症のクレペリンの分類によると、思春期から進行し感情鈍麻・意欲減退・思考の滅裂などが起こり、予後不良で人格荒廃へと進行する破瓜型、20歳前後での発症が多く興奮と昏迷が起きる緊張型、30~35歳で発症し妄想と幻覚が起こり体系化し確固とした妄想の世界を持つ妄想型がある。症状と遺伝子などの原因が1対1ではなく、遺伝的素因は脆弱因子である。


② 統合失調症とドパミン神経系の異常

陽性症状に有効な治療薬がほとんどドパミンD2受容体の遮断し、その効力と良く相関していることや、ドパミン神経系活性化薬が病状を悪化させたり、統合失調症様の症状を誘発したりすることから、脳内の中脳辺縁系(腹側被蓋野-側坐核)のドパミン神経系の異常興奮が統合失調症の病因であるとする、ドパミン仮説が提唱された。しかし、この仮説にはD2受容体拮抗薬が陰性症状に無効であることや、陽性症状でも無効な場合があること、作用発現までに数週間必要であることなどが問題点である。


③ 統合失調症治療薬の作用機序による分類

統合失調症の治療薬には、D2受容体拮抗薬、セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)、MARTA、ドパミンD2受容体部分活性薬がある。D2受容体拮抗薬は、陽性症状に有効で、副作用には、錐体外路系障害、遅発性ジスキネジアなどが見られる。クロルプロマジンは、強い鎮静と抗不安作用があり、低温麻酔に使用され、5-HT2、α1、M1、H1受容体も遮断する。副作用には起立性低血圧、悪性症候群がある。ハロペリドール・スピペロンはD2受容体選択性が高く、強い主作用と副作用がある。副作用は悪性症候群である。SDAにはリスペリドンがあり、陰性症状や認知機能低下にも有効であり、錐体外路系障害は弱い。副作用は悪性症候群と遅発性ジスキネジアである。ブロナンセリンも使用され始めている。MARTAは、セロトニン・ドパミン拮抗薬に加えて多くの神経伝達物質受容体に作用するもので、オランザピンやクエチアピンがある。オランザピンは、D2、D4、5-HT2、H1、α1などの受容体拮抗作用を持ち、陰性症状にも有効である。副作用は高血糖、悪性症候群、遅発性ジスキネジアがある。クエチアピンは、D2よりも5-HT2に高親和性を示し、副作用はオランザピンと同様である。いずれも糖尿病には禁忌である。ドパミンD2受容体の部分活性薬にはアリピプラゾールがあり、ドパミンが過剰な部位では抑制し、不足部分では亢進する。陰性症状に有効だが、糖尿病や高血糖患者には注意が必要である。



④ 統合失調症に対するドパミンD2受容体拮抗薬の有効性と限界

ドパミンD2受容体拮抗薬は、中脳辺縁系のドパミンD2受容体を遮断することで、妄想,幻覚といった陽性症状を改善するので統合失調症に対して有効性を持つ。しかし、陰性症状には無効であり、また、中脳黒質経路にも作用することで錐体外路障害等の副作用を引き起こすなどの限界もある。その限界に対処するための治療薬としては、第二世代抗精神病薬のセロトニン・ドパミン拮抗薬がある。これは、D2受容体遮断に加えてセロトニン5-HT2A受容体を遮断することで、陽性症状とともに陰性症状も改善する。また、中脳辺縁系以外ではドパミン遊離を促進し、D2受容体拮抗薬に見られる錐体外路障害等の副作用が尐ない。また、多数の受容体に作用するMARTAもあり、陰性症状にも有効である。さらに、第三世代抗精神病薬とされるアリピプラゾールはドパミンD2受容体の部分活性薬であり、ドパミン過剰の中脳辺縁系ではアンタゴニストとしてはたらいてドパミンを抑制し陽性症状を改善する一方、ドパミン不足の中脳皮質系ではアゴニストとしてはたらいてドパミンを亢進し陰性症状を改善する。


薬理について12(抗不安薬)


① 神経症と心身症について説明せよ。
② 不安障害の症状・原因・治療と抗不安薬について説明せよ。
③ 自閉症・ADHDの症状・原因・治療について説明せよ。



① 神経症と心身症

神経症は心因性の精神障害で器質的な変化を伴わない病態のことである。主なものに不安神経症・ヒステリー・広場恐怖症などがある。不安・緊張・抑うつ・睡眠障害・摂食障害など主に自律神経系が関与する身体症状、不安発作が主症状である。一方、心身症は心理的(社会的)要因により身体臓器に器質的または機能的な障害が認められる病態のことである。ストレスによる胃・十二指腸潰瘍が代表例であり、他にも、循環器系・呼吸器系・内分泌系などに症状が現れることがある。



② 不安障害の症状・原因・治療と抗不安薬

不安障害にはパニック障害や強迫性障害などがある。パニック障害では数秒から数時間持続する前兆がなく急性の激しい恐怖を感じ、息切れ・不整脈・失神・不快感などのパニック発作が起きる。しばしば、先行不安を伴い、広場恐怖症を引き起こし、外出困難となる。遺伝的要因の他、帯状回・前頭前野・側頭葉前部がパニック発作に関与している。自律神経の活性化で発作が起き、GABAA 受容体の低下も原因の1 つではないかと考えられている。治療には5-HT1A 受容体を介するSSRI のパロキセチンやベンゾジアゼピンが使用される。強迫性障害は捨て去ることができない強迫観念と繰り返さずにはいられない行動を特徴とする。強迫は数唱・確認・清浄・逃避に分類され、強迫観念から通常の社会生活が困難になる。遺伝的要因や前頭葉・尾状核の活動増加や溶血性連鎖球菌感染症による自己免疫疾患などが原因だと考えられている。治療にはフルボキサミンなどのSSRI や三環系抗うつ薬のクロミプラミンなどが使用され、行動療法や帯状回切除も有効である。抗不安薬にはタンドスピロンなどの5-HT1A 受容体作動薬やアルプラゾラム・ロラゼパム・ジアゼパムなどのベンゾジアゼピン誘導体が使用される。タンドスピロンはcAMP を減尐させる5-HT1A 受容体の作動薬で鎮静・催眠・抗痙攣・筋弛緩作用はない。動物実験では著効を示し期待されたが、臨床効果はいまいちで、抗不安薬としての使用は副作用の尐ないSSRI に置き換えられつつある。


③ 自閉症・ADHD の症状・原因・治療

自閉症では、コミュニケーション能力の発達障害や想像力の欠如・他人の意図が理解できない・決まった手順や方法に執着するなどの症状がみられる。ほとんどのケースで精神遅滞が起こっているが、高い芸術性を発揮したりすることもある。遺伝的要因が高く、脳の発達障害が原因である。あまり有効な治療薬がなく、治療は行動療法が中心である。ADHD は注意欠陥・多動障害のことで集中することやじっとしていることができない。通常は学校の教室で最初に見つかり、しばしば、攻撃行動・行為障害・学習障害・低い自尊心などと関連している。遺伝的要因やドパミントランスポーターの増加や線条体-前頭前野領域の神経回路異常が原因である。治療には、ドパミン取り込み阻害薬やメチルフェニデートが有効である。メチルフェニデートはADHD やナルコレプシーに有効でアンフェタミン様作用がある。抗うつ薬としても処方されたが、乱用により適用が除外された。

薬理について11(抗うつ薬)


① うつ病の特徴と症状について説明せよ。
② 薬物療法以外のうつ病の治療法と素質-ストレス仮説について説明せよ。
③ うつ病の生物学的病因についての初期の主要な学説は「モノアミン」学説であった。「モノアミン仮説」が提唱された根拠を説明し、うつ病との関連が特に深いと思われるモノアミンを2つあげなさい。
④ 三環系抗うつ薬とセロトニン選択的取り込み阻害薬の薬理作用と副作用について類似点および相違点を明確にしながら説明しなさい。
⑤ その他の抗うつ薬と抗うつ薬の長期的効果について説明せよ。
⑥ 抗躁病薬について説明せよ。
⑦ セロトニンの生合成と代謝について説明せよ。
⑧ 縫線核について説明せよ。




① うつ病の特徴と症状

うつ病は気分障害の中で一番多く、憂うつ状態が続き、感情の落ち込みだけではなく、日常生活に支障をきたすような身体症状を伴うことが多い。主な症状として、睡眠障害、疲労感、無力感、自殺念慮などがみられる。うつ病にはほとんどがうつ状態のみの単極型と躁状態とうつ状態を繰り返し途中に正常な寛解期のある双極型があり、メランコリー親和型性格や執着型性格の人がうつ病に罹りやすい。病相は単純ではなく、明確な診断基準による分類と治療が必要とされる。女性の方が男性より罹患しやすく、老年者の発症率が高く自殺の原因となることがあり、休む勇気と休ませる気配りが必要となる。原因としては急激な環境変化によるストレスや遺伝的素因、セロトニン・ノルアドレナリン神経系やHPA系の異常、脳由来神経栄養因子(BDNF)の減少などが考えられ、予防にはストレスを貯めない、規則正しい生活、定期的な運動、ポジティブシンキングなどが効果的である。


② 薬物療法以外のうつ病の治療法と素質-ストレス仮説

うつ病の治療法には薬物療法以外には電気痙攣療法(ECT)、断眠療法、高照度光療法、認知行動療法がある。ECTは全身麻酔下で筋弛緩薬を併用し、頭部への通電により人工的に全身痙攣を誘発させる治療法で、重症や薬物抵抗性のうつ病にも効果がある。断眠療法は全断眠やレム断眠が有効だが、やめるとすぐに元に戻ってしまう。高照度光療法は強い光を照射することで、季節性感情障害などに効果がある。認知行動療法は日常生活の行動パターン、考え方、クセなどを改め気分を変える。軽症に有効である。素質-ストレス仮説は遺伝的な素因などにより素質のある人が、発達早期にストレスに暴露されることで、ストレス反応の感受性が増大し、軽いストレッサーに対しても過敏に反応してしまうことがうつ病の原因だとする仮説である。これはストレスに対する個人差を説明でき、HPA系の過剰活動や海馬からの負のフィードバックの崩壊が原因だと考えられている。



③ モノアミン仮説

モノアミン仮説は、うつ病はシナプス間隙のモノアミンであるノルアドレナリン,セロトニンが欠乏することで生じるという説である。ドパミンは無関係である。モノアミンを枯渇させるレセルピンで高血圧治療中にうつ状態になって自殺した例があることやα2受容体作用薬であるメチルドパによってうつ状態が現れること、また、抗うつ薬である三環系抗うつ薬やモノアミン取り込み阻害薬、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)が、モノアミンの間隙濃度を高めることが根拠とされる。問題点としては、抗うつ薬が薬理作用を発現するまで数週間かかることやセロトニン・ノルアドレナリン選択的取り込み阻害薬の奏功が70%であることを説明できないことが挙げられる。


④ 三環系抗うつ薬とセロトニン選択的取り込み阻害薬の薬理作用と副作用

イミプラミン・アミトリプチンなどの三環系抗うつ薬、パロキセチン・フルボキサミンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)ともに、脳内モノアミンの神経終末への再取り込みを阻害し、モノアミンのシナプス間隙濃度を高めることで抗うつ作用を発現する。三環系抗うつ薬は、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害する効果もあるが、SSRIはセロトニン神経終末に存在するセロトニントランスポーターに特異的に作用するため、セロトニンに対して選択的に取り込み阻害をかけるが、三環系よりやや弱い。副作用に関しては、三環系抗うつ薬はSSRI等と違って選択性が低いために多く、抗コリン作用による口渇,便秘,排尿障害、抗α1作用による低血圧、Na+チャネル抑制による心臓の伝導抑制,抗H1作用による眠気、などがある。他方、SSRIはアドレナリン受容体やアセチルコリン受容体との親和性が低く、副作用が少ないが、肝薬物代謝酵素CYPファミリーを阻害するため、併用する薬の代謝に注意を要する。


⑤ その他の抗うつ薬と抗うつ薬の長期的効果

抗うつ薬には三環系抗うつ薬、SSRIの他に四環系抗うつ薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬がある。四環系抗うつ薬は抗コリン作用が少ない。ノルアドレナリンの取り込みを阻害するマプロチリンやα2・5-HT2・H1受容体を遮断するミアンセリンなどがある。SNRIにはミルナシプランがあり、セロトニンとノルアドレナリントランスポーターに特異的に作用して再取り込みを阻害する。副作用が尐なく安全であり、効果の発現が速い。モノアミン酸化酵素阻害薬はセロトニン・ノルアドレナリンの酸化酵素であるMAOAを阻害して遊離量を増加させる薬であるが、副作用が多く使用されていない。抗うつ薬は、長期的には自己受容体の強いdown regulationを引き起こすことで結果的に神経伝達効果を短期使用時より上昇させる。また、脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加や、海馬における神経新生の増加ももたらす。しかし、抗うつ薬で起こる変化が病気で起こる変化の逆とは限らない。


⑥ 抗躁病薬

躁病は気分爽快・意欲亢進・多弁などだけではなく、社会的逸脱行動や家庭内不適応などの症状があり治療対象となる。炭酸リチウムが治療に用いられる。健常者には作用がなく、躁状態を改善し、予防的効果もある。多くの生理作用を持つが、薬理作用の本体は不明で多くの仮説が提唱されている。振戦、消化器症状、腎機能障害、強調運動障害などの副作用があり、リチウム中毒を起こすこともある。抗けいれん薬のカルバマゼピンも躁病治療に有効である。



⑦ セロトニンの生合成と代謝

セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)はインドールアルキルアミンであり、ヒトの生体内セロトニンは胃腸管に90%が、血小板に8~9%が、1~2%が松果体・脳神経に存在している。生体内では、トリプトファンがトリプトファン水酸化酵素により5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)に変換され、さらに、5-HTP脱炭酸酵素によりセロトニンへと変換される。セロトニン生合成の律速段階はトリプトファン水酸化酵素であり、この酵素は酸素・基質・補酵素の量で調節され、最終産物によって調節されることはない。セロトニンの唯一の代謝経路はモノアミン酸化酵素(MAO)による脱アミノ反応である。


⑧ 縫線核

セロトニン神経系は縫線核から起始し、縫線核はセロトニン受容体の1種である5-HT1A受容体を持っている。この受容体は、アデニル酸シクラーゼ活性を抑制し、膜に過分極を起こさせることでシナプス伝達を抑制したり、自己受容体としてセロトニン神経活動を抑制したりする。



薬理について10(脂肪族アルコール)


① アルコールの特徴とその体内動態について述べよ。
② アルコールの急性作用について述べよ。
③ アルコールの慢性作用とアルコール依存症の治療について述べよ。
④ 全身麻酔薬とエタノールの薬理作用(作用機序を含む)を比較せよ。




① アルコールの特徴と体内動態

アルコールは古来「酒」として親しまれ、両親媒性をもち医療用には消毒と溶媒として用いられる。GABAA受容体の亢進とNMDA受容体抑制により急性作用として中枢神経系を抑制する。また、慢性作用によりさまざまな障害を引き起こし、アルコール依存症は社会問題になっている。アルコールは消化管・咽頭粘膜・肺などからほぼ完全に吸収され、30分以内に血中濃度がピークに達する。主に肝臓でアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)によって酸化されアセトアルデヒドとなり、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)によって酢酸とアセチルCoAとなり、TCAサイクルで代謝される。ADH・ALDHには個人差・人種差が大きい。高濃度になるとMEOSやP-450などによっても代謝される。


② アルコールの急性作用

アルコールの急性作用の主なものとしてはGABAA受容体亢進とNMDA受容体抑制による中枢神経抑制作用である。抗不安・鎮静や認知・感覚・言語・運動機能の障害や判断力の低下・順行性記憶障害や利尿などを引き起こすが、これらには個人差がある。また、就眠は促進するが、睡眠後期でしばしば覚醒を引き起こすので睡眠薬には不適当である。循環器系への作用により末梢血管が拡張し、発赤・温感が起こる。消化器系の作用により最初は胃酸分泌を増加させる(食前酒)が、悪心・嘔吐を引き起こす。急性毒性には、呼吸抑制・血圧低下・体温低下などがある。


③ アルコールの慢性作用とアルコール依存症の治療

アルコールの慢性作用にはアルコール依存症があり、これはアルコールに対して身体的にも精神的にも依存する症状である。耐性を生じ、熟眠を困難にし、肝臓障害により脂肪変性・肝硬変を引き起こす。その他、消化管や循環器系に作用し、脳機能を低下させるなどさまざまな毒性をもたらす。アルコール依存症の治療には、ALDHの抑制によりアセトアルデヒドが蓄積することで、アルコールに対して非常に不快な副作用を起こす嫌酒薬を用いる。嫌酒薬にはジスルフィラムやシアナミドがあり、シアナミドの方がジスルフィラムよりALDHを特異的に阻害する。また、本人の自覚や家族と社会の支援も治療には重要である。


④ 全身麻酔薬とエタノールの薬理作用(作用機序を含む)の比較

全身麻酔薬は、主に抑制性GABAA受容体の作用増強ないし興奮性グルタミン酸受容体(とくにNMDA型)の抑制に起因する。アドレナリンα2受容体抑制、アセチルコリンニコチン受容体抑制,Kチャネル増強,Naチャネル抑制を介し作用を及ぼすものもある。中枢神経細胞の全身麻酔薬に対する作用は下行性に進行する。麻酔深度の第Ⅰ期は無痛覚期で、第Ⅱ期は興奮期である。第Ⅲ期は手術適応期であり、手術中はこの期の維持が必要となる。第Ⅳ期は延髄麻酔期で、呼吸停止・血圧低下・心停止し、死亡に至る。エタノールもGABAA受容体の亢進・NMDA受容体抑制・下行性に進行など作用機序はほぼ同一と考えられているが、中枢神経系の脱抑制による興奮期の持続が全身麻酔薬よりも長く、手術期へ移行するには血中エタノール濃度を相当上げなければならない。しかし、手術期から延髄麻痺に移行する期間は逆に全身麻酔薬より短く、速やかに呼吸機能・心拍機能を停止させて死に至らしめる(急性アルコール中毒)。このためエタノールは全身麻酔薬と作用は似ているが全身麻酔薬として用いるには適さない。

薬理について09(抗てんかん薬・中枢性筋弛緩薬)


① てんかんとはどのような病気であるか、またその原因について述べよ。
② てんかん発作の分類について述べよ。
③ てんかん治療薬についてどの発作に有効なのかとあわせて述べよ。
④ 中枢性筋弛緩薬について述べよ。





① てんかんとはどのような病気であるか・てんかんの原因

てんかんとは脳神経系(大脳のニューロン)の過剰な発火により、反復性の発作(てんかん発作)を起こす慢性の脳疾患である。各発作により特徴的な脳波が見られ、てんかん患者の脳波は正常時もてんかんではない人と異なり、同じ神経内で形成される回路である異所性回路が見られる。てんかんの原因は多種多様である。イオンチャネルや神経伝達物質に関連する遺伝子異常が示唆され、脳の器質的変化を伴う症候性(続発性)のもの、脳の器質的変化を伴わない原発性(突発性)のもの、原因疾患が不明な潜在性のものがある。


② てんかん発作の分類

てんかん発作は大脳皮質全体に渡り明確な焦点のない全般発作と大脳の限定された部分に焦点がある部分発作がある。全般発作には強直間代発作(大発作)・欠神発作・脱力発作などが含まれ、部分発作には複雑部分発作(精神運動発作)と単純部分発作がある。大発作は突然の意識消失とともに、強直間代痙攣発作が起こり、1 分間前後発作が持続する。治療薬にはフェニトイン・フェノバルビタールなどを用いる。欠神発作は痙攣を伴わず、突然出現し突然回復する数秒から数十秒の意識消失発作で、動作や会話が急に止まり意識がなくなる。治療薬にはエトスクシミド・バルプロ酸などが用いられる。脱力発作は突然の筋緊張の低下で意識消失を伴わない発作である。
複雑部分発作は意識障害を伴う部分発作で、数十秒から数分間持続し、ほとんどが自動症を伴う。単純部分発作は意識障害がなく焦点となった脳部位の障害が現れる。部分発作の治療薬にはカルバマゼピン・ゾニサミドなどが用いられる。



③ てんかん治療薬

フェニトインは古くから抗てんかん薬として使用され、部分発作や全般強直間代発作に有効であるが、欠神・脱力発作には無効である。眼球振盪・複視などの副作用がある。カルバマゼピンは部分発作に有効で複雑部分発作の第一選択薬であるが、欠神・脱力発作には無効である。双極性うつ病にも有効である。興奮性シナプス伝達抑制、GABAの作用増強をもたらす。複視・運動失調などの副作用がある。ゾニサミドは部分発作や全般強直間代発作に有効で難治症例にも効果がある。エトスクシミドは欠神発作の第一選択薬であり、T型Caチャネルを阻害する。全般強直間代発作・脱力発作には無効である。バルプロ酸は欠神発作を含む全般発作に有効であり、躁うつ病や偏頭痛予防効果もある。Kチャネルに作用して興奮性を抑制する。悪心・肝障害などの副作用がある。フェノバルビタールは部分発作や全般強直間代発作に有効であり、催眠作用もあるが、それより低用量で抗痙攣作用がある。プリミドンはフェノバルビタールのプロドラッグである。クロバザムはベンゾジアゼピン誘導体で、他の抗てんかん薬と併用する。難治性のてんかんに比較的有効である。


④ 中枢性筋弛緩薬

中枢性筋弛緩薬は神経筋接合部や上位運動中枢へは作用せずに、脊髄における多シナプス性反射を抑制して筋弛緩をさせる。バクロフェンはGABAB作動薬であり、単・多シナプス反射を抑制する。サブスタンスP遊離を抑制して鎮痛作用がある。脳血管障害などに使用される。チザニジンはα2アドレナリン受容体作動薬であり、多シナプス反射を抑制する。侵害伝達を抑制して鎮痛作用がある。腰痛などに使用される。エペリゾンは多シナプス反射を抑制する。筋紡錘感度を低下させたり、Ca拮抗と亣感神経系抑制により降圧させたりする。


薬理について08(催眠・鎮静薬)


① 睡眠及び夢について述べよ。
② 催眠・鎮静薬について述べよ。
③ ベンゾジアゼピン受容体に対するインバースアゴニストについて述べよ。





① 睡眠・夢

睡眠の生理については不明な点が多く、古来研究対象となっている。脳幹網様体→視床→大脳皮質が意識水準を保ち、この活動低下が傾眠をもたらす。ノルアドレナリン・セロトニン・ドパミン神経系も睡眠に関与している。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、普通の睡眠ではレム睡眠とノンレム睡眠を約1 時間半の周期で繰り返している。レム睡眠は亣感神経系が亢進し脳波では覚醒状態であり、ノンレム睡眠は副亣感神経系が亢進し脳波は徐波である。睡眠にはアデノシン・メラトニン・オレキシンなども関与しており、覚醒から突然レム睡眠となるナルコレプシーはオレキシン含有神経の選択的な細胞死が原因である。熟眠できずに日中に眠気に襲われる睡眠時無呼吸症候群は事故との関連で社会問題化し、またうつ病患者の初期症状は不安や睡眠障害である。夢はそ
のほとんどをレム睡眠時に見ていて、翌朝覚えているのは、最後のレム睡眠時の夢である。古くから研究対象とされ、記憶に関与していると考えられている。



② 催眠・鎮静薬

不眠症には入眠障害・中途覚醒・熟眠困難がある。催眠薬とは睡眠と似た中枢神経抑制状態を起こす薬のことであるが、完全に自然な眠りを誘起する薬はなく、長期使用は避けるべきで、連用中止によりリバウンドが起こることがある。バルビツール酸誘導体はGABAA受容体に作用し、抑制性神経機能を亢進させ、興奮性シナプス伝達を抑制することで強い催眠と急激な眠りをもたらす。しかし、バルビツール酸誘導体には強い依存性や過量による急性中毒などの欠点があるため、現在催眠薬にはベンゾジアゼピン(BDZ)誘導体が汎用されている。また、チオペンタールは麻酔前投与薬、フェノバルビタールは抗てんかん薬として使用されている。ベンゾジアゼピン誘導体は安全で鎮静・催眠・抗不安などの作用を持つ。GABAA受容体に作用し、抑制性神経伝達を増強させ、自然に近い眠りを誘発する。倦怠感や刺激応答性の低下などの副作用がある。ブロチゾラム・トリアゾラム・クアゼパム・ニトラゼパムなどがあり、ゾルピデムはBDZ構造ではないが、BDZ受容体に作用する。古くから、ブロマイド・抱水クロラール・パラアルデヒドなどが催眠薬として使用されてきた。1960年頃に奇形児で問題となったサリドマイドも催眠薬であり、最近その作用が見直され他疾患の治療に使用され始めている。

③ ベンゾジアゼピン受容体に対するインバースアゴニスト

GABAA受容体複合体の一部をなすベンゾジアゼピン受容体は、内因性リガンドなどの影響で一部が常時活性化し、アゴニスト非存在下では活性型と不活性型が平衡状態にある。BDZ受容体のアゴニストは、活性型受容体に強い親和性をもち活性型を安定化することで、平衡を活性型へずらしてシグナルを増幅する。これに対してBDZ受容体のインバースアゴニストは、不活性型受容体に強い親和性をもち、平衡を不活性型にずらしてシグナルを抑制する。フルマゼニルなどのBDZ受容体のアンタゴニストは、活性型・不活性型どちらの受容体にも結合するため、アゴニスト,インバースアゴニスト双方のベンゾジアゼピン受容体への結合を阻害し、それぞれのはたらきを抑制する。


薬理について07(全身麻酔薬)


① 全身麻酔薬の特徴と臨床適用について述べよ。
② 全身麻酔薬の作用機序について述べよ。
③ 主な全身麻酔薬とその作用について述べよ。



① 全身麻酔薬の特徴と臨床適用

外科的手術に必須な全身麻酔の条件は睡眠(無意識)、鎮痛および筋弛緩(不動化)である。全身麻酔ではこれらを可逆的に、任意の時間だけ得られることが望まれる。静脈注射による静脈内麻酔と肺からの吸入による吸入麻酔が一般的である。初期には全身麻酔薬として笑気(亜酸化窒素)・エーテル・クロロホルムが用いられた。全身麻酔薬は中枢を非特異的に抑制するが、一様に抑制するわけではなく、下行性に進行し、大脳皮質→大脳基底核→小脳→脊髄→延髄の順に抑制する。麻酔深度には第Ⅰ期から第Ⅳ期まであり、手術適応期は第Ⅲ期の第2・3相である。麻酔深度が第Ⅳ期になると呼吸停止・血圧低下が起こり死に至るので、麻酔深度を的確に判断する必要がある。麻酔前投与薬には、抗不安薬・鎮静薬・鎮痛薬・副亣感神経遮断薬・制吐薬・筋弛緩薬などがある。


② 全身麻酔薬の作用機序

古くから多くの仮説が提唱されているが、実験証拠がありすべての現象を説明できるものはない。意識消失、鎮痛、運動・反射の抑制、記憶喪失などの作用強度や脳での作用点は個々の麻酔薬によって異なり、一般的な拮抗薬は存在しない。油/ガス分配係数と麻酔作用が相関を示すというリポイド説は、立体特異性が無く、麻酔作用を持つ分子構造の多様性、拮抗薬が無く、水溶性が高い分子の作用発現が遅いことなどが説明できる。酸化的リン酸化の阻害・ATPase活性の抑制によるとするエネルギー代謝・利用抑制説や、麻酔薬の標的は蛋白質でシナプス伝達に作用するという蛋白質説もある。GABAA受容体に作用し、グルタミン酸受容体のNMDA受容体やアセチルコリン受容体のニコチン受容体を抑制するなどの興奮性シナプス伝達の抑制によるとも考えられている。


③ 主な全身麻酔薬とその作用

全身麻酔薬には用量の増減が容易な吸入麻酔薬と即効性の静脈内麻酔薬がある。吸入麻酔薬には揮発性のハロタン・セボフルラン・イソフルラン、ガス性の亜酸化窒素(笑気)があり、静脈内麻酔薬にはプロポフォール・ケタミンがある。ハロタンは局所刺激性がないが、鎮痛作用が弱いので笑気と併用する。不整脈を誘発し、肝機能を抑制する。セボフルラン・イソフルランは導入・回復が速やかで、肝障害や不整脈誘発はハロタンより弱い。亜酸化窒素は強力な鎮痛作用を持つが、手術適応期になりにくいので他の全身麻酔薬と併用し、低酸素に注意する。プロポフォールは中枢神経におけるGABAA受容体に作用する。導入・回復が速やかで、術後嘔吐などの不快感が尐ない。麻酔の維持にオピオイドや笑気を併用し、血圧を低下させる作用がある。乳濁注射液なので凍結後は使用不可である。ケタミンはNMDA受容体拮抗薬として作用し、解離型麻酔薬とも呼ばれる。強い鎮痛作用を持ち、回復に時間がかかり、回復後も記憶喪失作用がある。乱用により麻薬指定がされている。

薬理について06(中枢神経系の神経伝達)


① グルタミン酸の中枢神経系における役割とその生合成・貯蔵・取り込みについて述べよ。
② グルタミン酸受容体について述べよ。
③ GABA(γ-アミノ酪酸)の役割とその分布・生合成・貯蔵・遊離・取り込みについて述べよ。
④ GABA 受容体について述べよ。
⑤ GABA は脳内の主要な抑制性神経伝達物質であり、GABAA 受容体は多くの中枢神経系薬物の作用点となっている。 GABAA 受容体に作用して臨床効果を発揮する薬物(群)を列挙し、薬理作用を説明せよ。また、共通の作用がありながら、薬理作用や臨床応用が大きく異なる理由について考察しなさい。
⑥ 以下の囲み記事はギャバ入り食品を説明した、あるインターネットサイトの文章(一部改変)である。著者が、抑制性神経と個体レベルでの鎮静を混同していることを含め、全体的に明らかに間違った内容となっている。以下の設問に答えなさい。


あなたはチョコレートを食べて、ホッとしたことはありませんか?それはチョコレートに含まれるギャバの効果です。ギャバ(GABA)の正式名はγアミノ酪酸といい、脳内で抑制系の神経伝達物質としてはたらいており、ギャバを摂ることでイライラなどをやわらげる効果があります。ストレスで痛めつけられた神経を鎮静してくれたり、精神の安定にも役立ちます。睡眠障害、自律神経の失調、うつ、更年期の抑うつや初老期の不眠といった症状の改善にも効果が期待されています。


(1)一つ一つの興奮性、抑制性神経の活動と個体レベルでの興奮、鎮静との関係について説明しなさい。
(2)経口摂取したGABA の脳内移行はほとんどないが、もし移行したとしたら、どのような症状が現れると考えられるか。また、そう考えた理由も述べなさい。
(3)うつ病患者で脳内GABA 濃度が上昇したときに起こることを予想しなさい。




①グルタミン酸の役割と生合成・貯蔵・取り込み

グルタミン酸は中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質であり、脳神経系の情報伝達・可塑性・形成に重要な役割を担っている。グルタミン酸はα-ケトグルタル酸・アスパラギン酸・グルタミンから生成される。グルタミン酸の生合成は前駆物質であるグルタミンの蓄積により一部調節され、さらに、最終産物により抑制性制御を受けている。生合成されたグルタミン酸は、ATP 依存性でプロトン勾配を利用する小胞グルタミン酸トランスポーター(VGLUT)によりシナプス小胞に取り込まれる。シナプス間隙に放出されたグルタミン酸は神経終末にそのまま取り込まれる以外に、グリア細胞に取り込まれ、グルタミンとなり遊離される。グルタミンは神経でグルタミン酸に変換される。細胞外のグルタミン酸濃度が長時間上昇すると傷害性を示す。興奮性神経細胞は高濃度のグルタミン酸を含むので、傷害を受けた細胞からグルタミン酸が遊離しさらに周囲の細胞を傷害させる。



② グルタミン酸受容体

グルタミン酸受容体にはイオンチャネル型と代謝型があり、イオンチャネル型はNon-NMDA型とNMDA型に分類される。Non-NMDA型はさらにAMPA型とKainate型に分類される。AMPA受容体はNa⁺・K⁺を通す非選択的陽イオンチャネルであり、一部はCa²⁺透過性を有し、速い興奮性神経伝達の大部分を担っている。NMDA受容体はNa⁺・K⁺・Ca²⁺非選択性イオンチャネルである。静止膜電位付近ではMg²⁺により抑制されているが、シナプス後膜が大きく脱分極するとMg²⁺による抑制が解除され活性化する。遅い興奮性神経伝達を担い、シナプス可塑性や神経回路構築に重要な役割を果たし、虚血などによる神経傷害にも関与している。NMDA受容体はグリシンやポリアミンにより増強され、フェンシクリジンやケタミン結合部位など多くの修飾物質が知られている。代謝型はイノシトールリン酸やG蛋白質と共役し、シナプスやグリア細胞に存在し、広範な作用を示す。


③ GABAの役割と分布・生合成・貯蔵・遊離・取り込み

GABAは興奮性伝達物質によるシナプス伝達を抑制する神経伝達物質として重要な役割を担い、多くの中枢抑制薬の作用点である。GABAは脳内に広く分布し、黒質・淡蒼球などに特に多い。末梢の膵ランゲルハンス島β細胞などにも分布し、末梢では血圧低下作用などを持つ。GABAはグルタミン酸からGAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)により合成される。ビタミンB6はGADの補酵素であり、ビタミンB6欠乏によってGABAは減尐する。GABAは小胞GABAトランスポーター(VGAT)により神経終末の扁平なシナプス小胞内に貯蔵される。GABAは神経インパルスによってCa²⁺依存性にシナプス間隙に遊離されるが、開口分泌によらない遊離が多い。シナプス間隙に遊離されたGABAは神経終末およびグリア細胞へ急速に取り込まれる。


④ GABA受容体

GABA受容体にはGABAA受容体・GABAB受容体・GABAC受容体がある。GABAA受容体はCl⁻チャネルと共役し、GABAが結合するとCl⁻が流入して神経細胞が過分極し、興奮性入力による脱分極効果が抑制される。ベンゾジアゼピンやバルビツール酸により増強され、ビククリンやピクロトキシンにより抑制され、また、てんかんや痙攣発現と関係がある。GABAB受容体は主にシナプス前終末に存在し、K⁺チャネルの活性化による過分極を引き起こし、GABAをはじめとする多くの神経伝達物質の遊離を抑制する。作用薬はバクロフェンである。

⑤ GABAA受容体に作用する薬物

●ベンゾジアゼピン
GABAA受容体に作用し、Clチャネルの開口頻度を増強することで、Cl⁻透過性を高めて過分極させ、活動電位の発生を抑制する。抗不安薬・鎮静薬・催眠薬・抗けいれん薬・筋弛緩薬として使用されている。

●バルビツール酸
GABAA受容体に結合しClチャネルを開口することですることで抑制性神経機能を亢進し、かつGlu受容体も弱く抑制することで興奮を抑制する。鎮静薬・催眠薬・抗けいれん薬・静脈麻酔薬として使用されている。

●アルコール
抑制性GABAA受容体の作用を増強し興奮性NMDA型Glu受容体を抑制する。中枢神経細胞の感受性の違いに応じて作用は下行性に進行するが、中枢神経系の脱抑制による興奮期の持続が全身麻酔薬よりも長い。また、手術期から延髄麻痺に移行するまでの期間は逆に全身麻酔薬より短く、速やかに呼吸機能,心拍機能を停止させて死に至らしめる。



●全身麻酔薬
エンフルランやプロポフォールはGABAA 受容体を活性化することで麻酔作用を発現する。全ての全身麻酔薬がGABAA 受容体に作用するわけではない。


これらはすべて同じGABAA 受容体に作用する。このうち、アルコールと揮発性麻酔薬は作用部位も同一だが、これとベンゾジアゼピン、バルビツール酸の作用点はそれぞれ異なる。また、それぞれ受容体との親和強度も異なる。これらの要因から、それぞれの薬物のCl チャネルの開口作用の有無,開口頻度の増強ないし開口時間の延長の程度に差異が生じることで、薬理作用や臨床応用は異なると考えられる。また、NMDA 型Glu 受容体等、GABAA 以外の受容体への作用の有無も関係すると考えられる。



⑥ GABA 神経系

(1)興奮性神経の活動は、主に興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸を伝達物質として行われる活動で、電位の変化による興奮が伝達される。グルタミン酸の受容体には、イオンチャネル型と代謝型の2 種類がある。これに対して、抑制性神経の活動は、主にGABA を神経伝達物質として、神経細胞の電位変化を抑えて、興奮の伝達を抑制する。GABA 受容体には、GABAA、GABAB の2 種類がある。GABAA はCl チャネルと共役していて、細胞の電位変化を抑え、神経伝達物質の遊離を抑制する。GABAB は、K チャネル活性化による過分極を引き起こす。また、個体レベルでの興奮・鎮静は亣感神経と副亣感神経の拮抗によって制御されている。そのため、興奮性の活動を行っている神経と、抑制系によって抑制される神経がいずれに属するかによって、個体レベルでの
興奮と鎮静が決まっている。

(2)GABA は、神経細胞の電位変化を抑制したり、過分極を引き起こしたりすることで、神経細胞の興奮伝達を妨げる。経口由来のGABA が移行して濃度が高くなると、神経系の活動が抑制されることに加えて、GABA 受容体作動薬に、催眠・鎮静効果があることから、催眠・鎮静効果があると考えられる。

(3)ノルアドレナリンやセロトニンなどの脳内モノアミンの低下がうつ病の原因であると考えるモノアミン仮説が正しいとすると、神経伝達物質の遊離・神経細胞の興奮伝達を抑制するGABA は、うつ病の症状を重くすると考えられる。







薬理について05(利尿薬、高血圧症治療薬、抗不整脈薬、虚血性心疾患治療薬、強心薬・心不全治療薬)


利尿薬


① 利尿薬の薬理作用と腎臓の機能・構造について述べよ
② 尿の生成過程について述べよ
③ ループ利尿薬とチアジド(サイアザイド)系利尿薬の作用部位・薬効の強さ・使い方の差異を述べよ
④ その他の利尿薬の作用部位・使い方について述べよ




① 利尿薬の薬理作用と腎臓の構造
• 利尿薬は尿量とともにNa⁺、Cl⁻の排泄を増加させる医薬品であり、浮腫や高血圧などの治療に用いられる。
• 腎臓は体内の水・電解質の恒常性を維持する重要な臓器で脊椎の両側に存在する。腎臓にはその構成単位であるネフロンが約1万個ある。ネフロンは尿細管と腎小体からなる。尿細管は近位尿細管・ヘンレループ・遠位尿細管からなり、腎小体は糸球体・ボーマン嚢から成り立っている。また、ネフロンは均一ではなく、腎内の存在位置によりその構造や機能が大きく異なっている。


② 尿の生成過程
• まず、糸球体で血液中の血球・蛋白・脂質以外の血液成分が糸球体濾過を受け150L/日の原尿が作られる。次に、尿細管で再吸収される。近位尿細管では、受動的再吸収によりアミノ酸・炭酸水素イオン・水を再吸収し、Na KポンプによりNa⁺・K⁺を再吸収し、炭酸脱水素酵素によりNa⁺を再吸収し血液や尿のpHを調節している。ヘンレループでは、周囲血管と対向流系をつくり、Na⁺‐K⁺‐2Cl⁻共輸送によりNa⁺とCl⁻を再吸収する。水は再吸収されない。遠位尿細管では、Na⁺ポンプ、炭酸脱水素酵素、アルドステロンによるNa⁺‐K⁺交換作用によりNa⁺を再吸収し、K⁺とH⁺の排泄を増加する。集合管では、抗利尿ホルモン(ADH、バゾプレシン)により水を再吸収する。


③ ループ利尿薬とチアジド(サイアザイド)系利尿薬の作用部位・薬効の強さ・使い方の差異
• ループ利尿薬はヘンレ上行脚のNa⁺‐K⁺‐2Cl⁻共輸送を阻害し、Na⁺とCl⁻の再吸収を抑制する。また、プロスタグランジン類を介し腎血流量を増加させる。強力な利尿作用を持つ。例として、フロセミド・ブメタニド・エタクリン酸などがあり、急性肺水腫やうっ血性心不全などに用いられる。低カリウム血症や聴覚障害などが主な副作用である。
• チアジド系利尿薬は遠位尿細管のNa⁺‐Cl⁻共輸送を阻害する。利尿作用はループ利尿薬より弱いが降圧作用が強いため高血圧症に対して用いられる。例として、ヒドロクロロチアジドやトリクロロチアジドなどがあり、抗カリウム血症や高脂血症などが主な副作用である。


④ その他の利尿薬の作用部位・使い方
• 炭酸脱水素酵素阻害薬は近位尿細管のH⁺‐Na⁺交換系を介するNa⁺の再吸収を抑制する。アセタゾラミドは尿をアルカリ性にし、浮腫や緑内障などに用いられる。鉱質コルチコイド受容体拮抗薬はカリウム保持性利尿薬で、遠位尿細管や集合管でアルドステロンの作用を抑制する。スピロノラクトンは高アルドステロン血症に効果があり、ループ利尿薬やチアジド系利尿薬と併用される。腎上皮Na⁺チャネル阻害薬もカリウム保持性利尿薬で、遠位尿細管や集合管のNa⁺チャネルを抑制する。トリアムテレンがあり、他の利尿薬と併用して低カリウム血症を予防する。浸透圧利尿薬は水の再吸収を抑制し浸透圧を上昇させる。マンニトール・イソソルビド・グリセリンがあり、腎不全予防や脳圧・眼圧亢進の治療に用いられる。




高血圧症治療薬

① 高血圧症とはどのような病気であるか、また治療薬にはどのような種類があるか述べよ
② レニン‐アンジオテンシン系とそれに作用する薬について述べよ
③ 血管拡張薬について述べよ
④ 交感神経遮断薬について述べよ


高血圧症とは・高血圧症治療薬の分類
• 高血圧症は正常範囲以上の血圧が持続する状態であり、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上が高血圧の目安になる。大部分は原因不明の本態性高血圧症であり、残りはストレスなどが原因である。末梢血管抵抗の増大が原因と考えられ、高血圧の長期持続により腎不全・心不全・脳梗塞などの危険性が増える。治療には薬物療法だけでなく減塩・肥満防止・運動などの生活習慣の改善が必要である。また、高血圧症治療薬には血管拡張薬・交感神経遮断薬・ACE阻害薬・アンジオテンシンⅡ受容体遮断薬・利尿薬がある。


② レニン‐アンジオテンシン系とそれに作用する薬
• 腎臓の傍糸球体細胞から分泌されたレニンにより、アンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンⅠが生成され、主に肺血管内皮細胞に存在するACEによってアンジオテンシンⅡへ転換される。アンジオテンシンⅡが受容体に結合すると、副腎皮質でのアルドステロンの合成・分泌が促進され、末梢血管が収縮し、腎集合管での再吸収を促進する。これによって体液量が増加する事により、昇圧作用をもたらし、さらに心肥大、血管内皮肥厚ももたらす。ACE阻害薬はアンジオテンシンⅡを抑制する。例として、カプトプリル・エナラプリル・テモカプリルがあり、空咳が主な副作用である。アンジオテンシン受容体遮断薬はアンジオテンシンⅡと拮抗し血管を拡張する。例として、ロサルタン・カンデサルタンがあり、空咳が少ない。


③ 血管拡張薬
• Ca拮抗薬は血管平滑筋のL型Caチャネルを阻害して、血管平滑筋を弛緩させ末梢抵抗を下げることにより血圧を下げる。ニフェジピン・ニカルジピンなどのジヒドロピリジン系・ジルチアゼム・ベラパミルがあり、ジルチアゼムとベラパミルは心機能を抑制する。頭痛やめまいなどの副作用がある。他の血管拡張薬としては、NOを放出して直接血管を拡張させるニトロプルシドや細動脈に直接作用し拡張させるヒドララジンがある。


④ 交感神経遮断薬
• α1アドレナリン受容体遮断薬にはプラゾシン・ブナゾシンがあり、抵抗血管を拡張させる。βアドレナリン受容体遮断薬にはプロプラノロール・ピンドロール・アテノロールがあり、心拍出量を減少・レニン分泌抑制などをもたらす。投薬中止によるリバウンドが起こることがある。また、α1とβ受容体遮断作用をもつラベタロールもある。中枢性α2アドレナリン受容体遮断薬にはクロニジン・αメチルドパがあり、交感神経活動を抑制し、末梢抵抗の低下と心拍出量を抑制をもたらす。他には、ノルアドレナリン遊離を抑制する神経伝達遮断薬のグアネチジンや、カテコラミンを枯渇させる神経伝達物質枯渇薬のレセルピンがある。




抗不整脈薬

① 不整脈とはどのような病気であるか、またその発生機序について述べよ
② torsades de pointesを説明せよ
③ 不整脈の原因の一つであるリエントリーの発生機序とそのサイクルを断ち切るためにどのような機序の薬が使われるか述べよ
④ 抗不整脈薬のVaughan Williamsによる分類と主な薬物について述べよ


① 不整脈とは・不整脈の発生機序


• 不整脈とは正常洞調律以外の心臓電気現象の異常の総称である。調律の異常や拍数の異常が起こり、頻脈には投薬治療を、徐脈には人工ペースメーカー治療が行われる。不整脈のなかでも心室細動は致死的である。不整脈は異所性刺激・自動能の異常などの刺激生成の異常や、洞房接合部・心筋細胞間などにおける伝導遅延やブロックなどの刺激伝導の異常によって引き起こされる。刺激生成異常にはtorsades de pointes(倒錯型心室頻拍)、刺激伝導異常にはリエントリーなどの重篤な症状になりうる異常もある。



② torsades de pointes

• torsades de pointesとは脱分極後の再分極の遅れにより、再分極過程から再び脱分極(早期脱分極)することで起こる倒錯型心室頻拍のことである。QT延長が原因となり、心室細動に移行して突然死へといたる可能性がある。Kチャネル拮抗薬などの重篤な副作用である。
*QT間隔とはAPD(活動電位持続時間)の平均的な長さのこと



③ リエントリーの発生機序とそのサイクルを断ち切るためにどのような機序の薬が使われるか

• 心筋の興奮は、洞房結節から心室筋細胞へと秩序だって伝導し消失するが、病的組織(伝導速度が異なる部位)があると、興奮の一部がもとに来た方向に引き返してしまう。すると、興奮が旋回する回路が生じ、本来は一度の興奮で何度も興奮が起こってしまい、結果、(頻脈性)不整脈になってしまう。このような状態をリエントリーと呼ぶ。心筋の不応期が短く、また伝導速度が遅いほどリエントリーのサイクルは安定する。このサイクルを断ち切るためには、不応期を延長させる薬(Na⁺チャネル拮抗薬・K⁺チャネル拮抗薬など)が有効である。薬としては、プロカインアミド・ジソピラミド・アミオダロンなどが挙げられる。



④ Vaughan Williamsによる分類と主な薬物

• クラスⅠはNaチャネル拮抗薬で、aタイプはAPDを延長し、伝導も抑制する。期外収縮などに用いられ、キニジン・プロカインアミド・ジソラピドがある。bタイプはAPDを短縮し、心室性不整脈に用いられる。リドカイン・メキシレチン・フェニトインがある。cタイプはAPDは不変で伝導抑制が強い。フレカイニドやピルジカイニドがある。クラスⅡはアドレナリンβ1受容体遮断薬で、交感神経亢進による不整脈に有効である。アセブトロールやアテノロールがある。クラスⅢはKチャネル拮抗薬でAPDと不応期を延長する。アミオダロンがあり、重篤な副作用があるため他の薬が無効な例に限り用いられる。クラスⅣはCaチャネル拮抗薬で、心筋の興奮を抑制する。ベラパミルがあるが、全てのCa拮抗薬が有効なわけではない。




虚血性心疾患治療薬

① 狭心症とはどのような病気であるか、またその治療について述べよ
② 労作性狭心症と安静狭心症の成因と治療法の違いについて述べよ
③ 側副血行路を説明せよ。
④ ニトログリセリンの狭心症作用の機序とその他の狭心症治療薬について述べよ
⑤ 心筋梗塞とはどのような病気であるか、またその治療薬・予防薬について述べよ




① 狭心症とは・狭心症の治療

• 狭心症は、冠血流による心筋への酸素供給と心筋の酸素消費のバランスが崩れ、心筋の一部が一過性に酸素欠乏(虚血)状態に陥るために発生する病態である。胸痛発作が特徴で、肩や上肢などにも痛みが放散する。狭心症の治療には心仕事量を低下させ心筋の酸素需要を低下させる・虚血部への血流増加により酸素供給を増加させる・スパスム(冠動脈の痙攣)の寛解、予防・動脈硬化の防止と側副血行路の確保がある。また、心筋梗塞への移行防止も重要である。




② 労作性狭心症と安静狭心症の成因・治療法の違い

• 労作性狭心症は、冠動脈の器質的狭窄により、運動や階段を上るときなどの労作時に増えた心筋酸素需要に見合う冠血流増加がない時に起こる狭心症である。安静狭心症は、冠動脈の攣縮や血栓形成により心筋への酸素供給が不足した時に起こる狭心症である。労作に関係なく、夜間就寝中や早朝の日常動作などで胸痛が生じる。労作性狭心症には心筋の酸素消費量を減らすβ受容体遮断薬が有効で、安静狭心症には冠血管攣縮を抑制するCa拮抗薬が有効である。また、どちらのタイプの狭心症にも硝酸薬は有効である。




③ 側副血行路

• 側副血行路とは、血管の狭窄・閉塞などでの順行性血流不足部位へ血液を供給するために、対側または同側動脈が屈曲・拡張してできた血流路のことで、自然のバイパスといえる。通常の血管径は200μm以下であるが、圧力差により拡張する。血管の狭窄が緩徐に進行すると、側副血行路の発達により梗塞に至らない場合もある。



④ ニトログリセリンの狭心症作用の機序・その他の狭心症治療薬

• ニトログリセリンは体内で脱ニトロ化され一酸化窒素(NO)を遊離する。NOはグアニル酸シクラーゼを活性化し、cGMPの産生を促す結果、細胞内のCa2+濃度が低下するため血管平滑筋が弛緩し、血管拡張を起こさせる。また、全身に投与すると、血液の心臓帰還量(前負荷=静脈への作用)が減少する。
• Ca拮抗薬は強い降圧作用により後負荷(=動脈への作用)を減少させたり、冠血管攣縮を抑制する。ジルチアゼム・ベラパミルなどがある。β受容体遮断薬は心拍数や心筋仕事量を減らし、酸素消費量を減らす。また、血圧降下により後負荷を減少させる。プロプラノロール・アセブトロールなどがある。その他、アデノシンの血管拡張作用を増強するアデノシン作用増強薬のジラゼップ・ジピリダモールがある。



⑤ 心筋梗塞とは・心筋梗塞の治療薬・予防薬

• 心筋梗塞とは、冠循環障害による酸素供給不足が一定期間続くことにより起こる心筋の変性や壊死のことである。粥状硬化巣の破綻による血栓、栓塞などが原因で、壊死部から酵素が遊離したり、激しい胸痛・呼吸困難・吐き気などが症状としてあらわれる。治療にはプラスミノゲンを血栓(フィブリン)溶解作用を持つプラスミンに変換するtPA(組織型プラスミノゲンアクチベーター)などの血栓溶解薬や、鎮痛薬・抗血液凝固薬・抗不整脈薬などが用いられる。




強心薬・心不全治療薬

① 心不全とはどのような病気であるか・慢性心不全の代償機構について述べよ
② 強心配糖体の作用機序と副作用について述べよ
③ cAMPを増加させる強心薬について述べよ
④ その他の心不全治療薬について述べよ




① 心不全とは・慢性心不全の代償機構

• 心不全は心筋障害などによる心機能低下により、心臓が適切に末梢組織に血液を供給できない状態で、心筋梗塞・拡張型心筋症などの器質的心疾患の結果として生じる。慢性心不全により、心臓に様々な代償機構が働く。レニン‐アンジオテンシン系の亢進により腎臓でのNaと水の再吸収量が増加し、循環血液量の増大で心拍出量が増加(Frank‐Starling機構)したり、交感神経の活性化により心拍数が増加し、心拍出量が増加したり、末梢細動脈の収縮により、脳・腎臓などの中央循環を維持したりする。これらの代償機構により浮腫・不整脈・末梢組織の酸素不足や心筋のリモデリングを引き起こし、心機能がさらに悪化し悪循環に陥る。




② 強心配糖体の作用機序と副作用

• 強心配糖体の代表的なものとして、ジギタリスがある。これは、Na+/K+‐ATPaseを阻害することで、細胞内Na⁺濃度を上昇させる。これにより、Na⁺‐Ca²⁺交換系の逆交換(Ca²⁺の流入)を促進し、心筋細胞内Ca2+濃度を上昇させ、心収縮力の増強と心拍数低下を引き起こし、心機能効率が良くなる。治療域濃度のジギタリスは、副交感神経緊張を高め、交感神経緊張を下げ、心臓の刺激伝達系を抑制する。ジギタリスにはジギトキシンやジゴキシンがあり、主にジゴキシンが臨床でうっ血性心不全や、心房細動などの不整脈に適用される。しかし、ジギタリスは治療域が非常に狭く、治療域を超えると異所性不整脈、心室性不整脈、消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振)などの重篤な副作用が見られる。



③ cAMPを増加させる強心薬

• 心筋収縮力を増強する目的で、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害あるいはアデ二ル酸シクラーゼの活性化によってcAMPを増加させ、筋小胞体のCa²⁺含量を増加させる薬が心不全治療に用いられる。β1受容体に作用するカテコラミン類にはドパミン・ドブタミン・デノパミンがあり、心収縮力を増強する。デノパミンはβ1受容体の部分作用薬で脱感作しにくい。PDE阻害薬はPDE阻害によりcAMPの分解を抑制し、β受容体を介さずにcAMPを増加させる。脱感作しにくく、心収縮力増強作用と血管弛緩作用を持つ。アムリノン・ミルリノン・ピモベンダンがある。また、cAMPアナログとしてブクラデシンがあり、これは細胞内でcAMPに変化して心収縮力増強作用、末梢血管拡張による後負荷減少作用を持つ。



④ その他の心不全治療薬

• レニン‐アンジオテンシン系阻害薬のACE阻害薬(エナラプリルなど)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ロサルタン・カンデサルタンなど)は血管拡張作用による前負荷および後負荷抑制して心不全を改善する。さらに、血管リモデリングを抑制し、心筋保護作用を持つ。アドレナリンβ受容体遮断薬は心不全で過剰に亢進した交感神経作用に拮抗して、突然死を防ぐ。カルベジロールなどが使われるが、用量の設定が難しい。
*急性心不全には利尿薬や亜硝酸化合物を経静脈的に、慢性心不全には強心配糖体・アンジオテンシン系阻害薬・利尿薬を併用して経口的に用いられる。

薬理について04(局所麻酔薬、末梢性筋弛緩薬)

局所麻酔薬

① 局所麻酔薬の使用目的と適用方法について述べよ
② 局所麻酔薬の作用機序と知覚神経の感受性の違いについて述べよ
③ 局所麻酔薬の頻度依存性作用(frequencyor‐use‐dependent effect)について述べよ
④ 局所麻酔薬の構造的特徴と主な薬物について述べよ


① 局所麻酔薬の使用目的と適用方法

•  局所麻酔薬は局所に適用して知覚神経の伝導を阻害し、主に痛感を遮断する目的で歯科治療・簡単な外科治療・抗不整脈などに使用される。その適用方法には、粘膜等に塗布などを行う表面麻酔・手術部位周辺に注射し薬物を直接作用させる浸潤麻酔・神経内やその周囲に注射してその神経の支配領域を麻痺させる伝達麻酔・脊髄くも膜下腔に注入しその支配下の広領域を麻痺させる脊髄麻酔などがある。また、局所麻酔薬は局所に高濃度の状態で留めておく必要があり、血流による拡散を防ぐためエピネフリンなどの血管収縮薬と併用される。

② 局所麻酔薬の作用機序と知覚神経の感受性の違い

• 局所麻酔薬は神経軸索のNaチャネルに内側から直接作用し、Na⁺の流入を防ぐ。その結果、活動電位の上昇は抑えられ、神経伝導は遮断される。また、一般に神経線維の局所麻酔薬に対する感受性は、細い線維ほど高く、無髄線維は有髄線維より高い。よって、局所麻酔薬により遅く鈍い痛み(細い無髄C線維)、速く鋭い痛み・温覚(細い有髄Aδ線維)、触覚(太くて有髄のAβ線維)、深部感覚、骨格筋の緊張・随意運動の順に麻痺していく。


③ 局所麻酔薬の頻度依存性作用(frequency‐or‐use-dependent effect)

• 局所麻酔薬の遮断強度が、神経がどれだけの頻度(frequency)で、あるいはどのくらい前もって刺激されていたか(つまりどれだけ最近に使われていたか(use))によって異なること。つまり、興奮していない静止期の神経は、頻繁に刺激されている神経よりも局所麻酔薬に対する感受性が低くなるが、あらかじめ高頻度で刺激されていると、局所麻酔薬の遮断効果は増強されるということ。
  ( Na⁺チャネルが開いた状態のときのみ、プロトン型の局所麻酔薬が結合でき、Na⁺チャネルが不活性化した状態ほど局所麻酔薬は強く、しかも持続性に結合できるためと考えられている。 )

④ 局所麻酔薬の構造的特徴と主な薬物

• 局所麻酔薬は脂溶性の芳香環グループと親水性のアミングループがエステルまたはアミド結合で繋がり、細胞膜を透過するためにある程度の脂溶性を持つ。その多くは弱塩基で、イオン化(親水性)・非イオン化(脂溶性)が混在し、一般に脂溶性が高いほうが強力である。炎症部位ではpHが下がっているので効きにくくなると考えられている。代表的な薬物としてコカの葉に含まれるコカインがあり、その他プロカイン、リドカイン、テトラカイン、ブピバカイン、ロピバカインなどがあり、効力はテトラカイン、ブピバカイン、ロピバカイン>リドカイン>プロカインの順である。


末梢性筋弛緩薬

① 末梢性筋弛緩薬の薬理作用・使用目的・臨床適用・構造的特徴について述べよ
② 末梢性筋弛緩薬の作用機序による分類と主な薬物について述べよ


① 末梢性筋弛緩薬の薬理作用・使用目的・臨床適用・構造的特徴

• 末梢性筋弛緩薬とは骨格筋の選択的弛緩をもたらす薬物のうち、神経筋接合部や筋細胞に作用するもののことである。これは、外科手術時の全身麻酔の補助・痙攣性疾患・電気ショック療法の補助などに使用される。主な副作用としては、筋肉痛や徐脈などがあり、緑内障患者には禁忌である。その構造的特徴は、アセチルコリンと類似の構造を分子内に有し、第4級アンモニウム基を有することである。

②末梢性筋弛緩薬の作用機序による分類と主な薬物

• 競合的拮抗薬にはクラレ・d‐ツボクラリン・パンクロニウム・ベクロニウムがある。これは神経筋接合部においてニコチン性アセチルコリン受容体をアセチルコリンと競合し、コリンエステラーゼ阻害薬と拮抗する。収縮の速い小さな筋から弛緩していく。脱分極性拮抗薬にはサクシニルコリン・デカメトニウムがある。これは持続的な脱分極により神経伝達を抑制する。サクシニルコリンはコリンエステラーゼで分解され、コリンエステラーゼ阻害薬によって作用が増強される。 Ca²⁺遊離阻害薬にはダントロレンがあり、筋小胞体からのCa遊離を抑制して筋を弛緩させる。悪性高熱症に有効である。伝達物質遊離阻害薬にはボツリヌス毒素があり、シナプス小胞からの開口放出を不可逆的に阻害する。顔面の痙攣の治療などに用いられるが、新たな神経終板が形成されるため効果は徐々に消失する。





























薬理について03(アドレナリン作動性神経系、コリン作動性神経系、非アドレナリン非コリン作動性神経系)


アドレナリン作動性神経系

① この神経における神経伝達物質の生合成、貯蔵、遊離、再利用、代謝について説明せよ。
② この神経が血管平滑筋を支配している場合、どのような受容体を介して血管平滑筋に作用するか。また、受容体の情報伝達機構や拮抗薬についても説明せよ。
③ α受容体のサブタイプ、作用薬と遮断薬について述べよ
④ β受容体のサブタイプ、作用薬と遮断薬、臨床適用について述べよ



① 神経伝達物質の生合成・貯蔵・遊離・再利用・代謝

• 神経終末に能動輸送で取り込まれたチロシンは細胞質でドーパーを経てドパミンまで変換される。チロシン水酸化酵素が全体の律速段階である。ドパミンは小胞モノアミントランスポーター(VMAT)により、シナプス小胞に取り込まれ、小胞内でノルアドレナリン(NA)に変わり、貯蔵される。シナプス小胞はシナプス膜にドッキングし、細胞内Ca²⁺濃度が上昇すると開口してNAが遊離する。遊離したNAはシナプス後膜や前膜のアドレナリン受容体に作用する。NAは大部分がシナプス終末や後膜に取り込まれ、一部は代謝される。シナプス終末に取り込まれたNAはVMATによりシナプス小胞へ取り込まれ再利用される。また、NAは細胞内ではMAOによって、細胞外ではCOMTによってVMAに代謝される。


②どのような受容体を介して血管平滑筋に作用するか・その受容体の情報伝達機構や拮抗薬

• 血管平滑筋にはアドレナリンα1受容体があり、この受容体に作用すると血管収縮が起こり血圧が上昇する。α1受容体はG蛋白質共役型受容体であり、アゴニストが結合すると三量体のG蛋白質のαサブユニットが分離しホスホリパーゼCを活性化する。このホスホリパーゼCは細胞内のIP₃(イノシトール三リン酸)やDAG(ジアシルグリセロール)を増加させ、細胞内のCa²⁺の放出を促進する。α1受容体の拮抗薬としてはプラゾシンやウラピジルがあり、降圧作用や前立腺弛緩作用を持つ。



③ α受容体のサブタイプ・作用薬と遮断薬

• α受容体にはα1・α2受容体がある。α1受容体は主に血管平滑筋に存在し、血管収縮などの作用を持つ。作用薬にはフェニレフリンやメトキサミンがあり、低血圧に用いられる。選択的遮断薬にはプラゾシンやウラピジルがあり、降圧作用や前立腺弛緩作用を持ち高血圧や排尿障害に用いられる。α受容体非選択的遮断薬にはフェントラミンがあり、褐色細胞腫の高血圧に用いられる。α2受容体はシナプス前膜に存在する自己受容体で神経伝達物質遊離抑制(負のフィードバック)などの作用を持つ。作用薬にはクロニジンやメチルドパがあり、高血圧に用いられる。α2受容体選択的遮断薬は臨床的にはほとんど利用されない。



④ β受容体のサブタイプ・作用薬と遮断薬・臨床適用

• β受容体にはβ1・β2・β3受容体がある。β1受容体は主に心筋に存在し、心拍増加・心収縮力増大などの作用を持つ。作用薬にはドブタミン・デノパミンがあり心筋収縮力を増強する。β2受容体は肺・肝臓・平滑筋に存在し、平滑筋弛緩・グリコーゲン分解などの作用を持つ。 作用薬には気管支喘息治療薬のプロカテロールや子宮弛緩薬のリトドリンがある。β受容体の持続的刺激は脱感作しやすい。非選択的β受容体遮断薬にはプロプラノロールやチモロールがある。心拍出量低下・レニン遊離抑制などの作用を持ち、高血圧・狭心症・不整脈に適用されるが、気管支喘息患者には禁忌である。選択的β1受容体遮断薬にはアテノロールがあり、気管支喘息患者の高血圧・狭心症・不整脈の治療に適用することができる。





コリン作動性神経系

① アセチルコリンの生合成について説明せよ。
② 神経伝達が終了したアセチルコリンはほかの神経伝達物質とは異なるメカニズムでシナプス間隙から取り除かれる。そのメカニズムを他の神経伝達物質と比較して説明せよ。また、最近話題になっているメタミドホスと関連があれば、それも説明せよ。
③アセチルコリンを神経伝達物質とする末梢神経系を挙げ、その神経系で利用されるアセチルコリン受容体をそれぞれ説明せよ。


④ ムスカリン受容体とニコチン受容体について、それらの存在部位を説明せよ。また、ムスカリン受容体遮断薬が消化管および循環系に及ぼす作用を説明せよ。
⑤ 小腸に存在するアセチルコリンの受容体について説明せよ。
⑥ アセチルコリン受容体の作用薬と遮断薬について説明せよ。



① アセチルコリンの生合成

• アセチルコリンはコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)によりアセチルCoAとコリンから細胞質で合成される。この反応の律速段階はコリンの取り込みである。ChATは細胞体で合成され軸索輸送によって運ばれて、神経終末の細胞質に存在する。アセチルCoAはミトコンドリア内膜で主にピルビン酸脱水素酵素により合成され、細胞質に運ばれる。コリンは神経系では合成されず、アセチルコリンの分解産物や膜のホスファチジルコリンが終末内に取り込まれる。生合成されたアセチルコリンは、小胞内から外へのH⁺の逆輸送と共役して小胞内に取り込まれる。


② アセチルコリンの代謝とメタミドホス

• アセチルコリン以外の神経伝達物質(例えば、セロトニンやカテコラミン)は、神経終末から放出され、神経伝達を終えた後、そのままの形で神経終末へ再取り込みされることで、シナプス間隙から取り除かれる。一方、アセチルコリンは、神経伝達を終了すると、そのままの形で再取り込みされず、コリンエステラーゼによってコリンと酢酸に速やかに加水分解され、コリンは神経終末に取り込まれて再利用される。 有機リン系殺虫剤のメタミドホスは、コリンエステラーゼの不可逆的な阻害薬であるため、シナプス間隙からアセチルコリンが取り除かれないままになり、興奮が連続して伝えられ続ける状態となる。よって、神経生理機能に障害を与える。




③ アセチルコリンを伝達物質とする末梢神経系と受容体

• アセチルコリンを伝達物質とする末梢神経系には、運動神経・交感神経節前線維・副交感神経節前線維・副交感神経節後線維・汗腺支配交感神経節後線維などがある。運動神経 には筋肉型ニコチン受容体NMが、交感神経節前線維・副交感神経節前線維 には(末梢)神経型ニコチン受容体NN がある。また、副交感神経節後線維・汗腺支配交感神経節後線維にはムスカリン受容体Mがある。なお、ニコチン受容体は二つのサブタイプを持つイオンチャネル型受容体であり、ムスカリン受容体は五つのサブタイプを持つGタンパク質型の受容体である。


④ ムスカリン受容体とニコチン受容体の存在部位・ムスカリン受容体遮断薬が消化管および循環系に及ぼす作用

• ムスカリン受容体Mは副交感神経節後線維や汗腺支配交感神経節後線維に存在する。ニコチン受容体は、運動神経終末の神経筋接合部に筋肉型ニコチン受容体NMが、交感神経節前線維や副交感神経節前線維に神経型ニコチン受容体NNが存在する。
• 消化管にはムスカリン受容体遮断薬は消化管緊張の低下と運動の減少作用を持ち、消化管潰瘍や胃腸炎などの治療に用いられる。また、循環系にはムスカリン受容体遮断薬は少量で徐脈から頻脈にする作用を持ち、迷走神経過興奮による徐脈や迷走神経反射の抑制に用いられる。


⑤ 小腸に存在するアセチルコリンの受容体

• 小腸にはムスカリン受容体M3とM2がある。ベサネコールなどのムスカリン受容体作用薬を用いると、小腸は収縮し蠕動運動が亢進し、消化管麻痺などの治療効果がある。一方、ブチルスコポラミンなどのムスカリン受容体遮断薬を用いると、消化管緊張の低下と運動の減少が起こり、消化性潰瘍や腸炎などの治療効果がある。

⑥ アセチルコリン受容体の作用薬と遮断薬


• コリン作用薬には消化管運動を促進するベサネコールや緑内障治療薬のカルバコール・ピロカルピンがある。コリン作用薬にはコリンエステラーゼ作用薬もあり、重症筋無力症や排尿障害治療薬のネオスチグミンやアルツハイマー病治療薬のドネペジルがある。サリンなどの不可逆的阻害薬は強い毒性を持つ。筋肉型ニコチン受容体遮断薬は末梢性筋弛緩薬として臨床適用され、拮抗型としてd‐ツボクラリンが、脱分極型としてサクシニルコリンがある。 神経型ニコチン受容体遮断薬には自律神経遮断薬のヘキサメトニウムがある。 ムスカリン受容体遮断薬には、散瞳薬や不可逆的コリンエステラーゼ阻害薬の解毒に使われるアトロピンや胃潰瘍治療などに使われるブチルスコポラミンがある。



非アドレナリン非コリン作動性神経系


① 神経伝達物質としてのATP(アデノシン三リン酸)の作用について述べよ
② 一酸化窒素(NO)について述べよ
③ 神経ペプチドについて述べよ




① 神経伝達物質としてのATPの作用

• ATPは、自律神経や中枢神経終末のシナプス小胞に他の神経伝達物質と高濃度に共存し、神経インパルスにより、シナプス小胞から開口分泌によって放出される。ATPはシナプス後膜のATP受容体P2Xに働き、迅速なシナプス伝達を仲介し、またATP受容体P2Yに働きシナプス伝達を多様に変調させる。ATPは血管拡張作用により各種組織の血流を増加させたり、神経因性疼痛を引き起こしたりする。また、ATPが加水分解されて生成したアデノシンも情報伝達物質として作用し、神経伝達物質の遊離阻害や冠血管弛緩作用を持つ。




② 一酸化窒素(NO)

• NOは血管内皮弛緩因子(EDRF)として同定された最小の情報伝達物質である。ラジカル構造を持ち、半減期は短い。常温で気体であり、脂溶性で細胞膜を自由に通過するため、細胞内に貯蔵できず、産生されると直ちに拡散し、細胞膜をこえて周辺の細胞に速やかに浸透する。NOはNO合成酵素(NOS)によりL‐アルギニンと酸素からL‐シトルリンとともに生成される。細胞質に常在するnNOS(神経型)とeNOS(血管内皮型)は細胞内Ca²⁺濃度によって調節されシナプス可塑性の維持や血小板凝集抑制などの機能を持つ。iNOS(誘導型)はマクロファージや好中球による殺菌作用に関与している。NOは可溶性グアニル酸シクラーゼの内因性活性化因子で、cGMP産生を増加させ、血管拡張などの多様な反応を引き起こす。




③ 神経ペプチド

• 神経ペプチドは神経伝達物質として働き、ニューロン内に低分子伝達物質と共存している。細胞体で合成された神経ペプチド前駆体はゴルジ体でプロセシングを受けながら、神経終末に運ばれ低分子伝達物質とは異なる小胞に貯蔵され、遊離させるためには高頻度刺激が必要となる。サブスタンスPはカプサイシンにより遊離され痛覚に関与し、血管透過性の亢進、平滑筋収縮などの作用を持つ。ニューロペプチドYは中枢では摂食促進、末梢では血管収縮などの作用を持つ。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)はG蛋白質共役型受容体を持ち、知覚・統合運動機能に重要な働きがあり、血管拡張作用などを持つ。他には鎮痛や腸管収縮抑制作用を持つエンドルフィン・ダイノルフィン・エンケファリンもある。

薬理について02(薬の作用点、自律神経系と神経節作用薬)

覚えるべき構造式
1.アセチルコリン
2.アドレナリン
3.ノルアドレナリン
4.ドパミン



薬の作用点

競合的結抗薬、非競合的拮抗薬、完全活性薬、部分活性薬の意味とそれぞれの用量作用曲線について説明せよ。


競合的結抗薬、非競合的拮抗薬

• 競合的拮抗薬が存在すると、作用薬の受容体への結合は阻害されるが、作用薬の濃度を上げていくと、競合的拮抗薬は受容体から追い出されて、ついに作用薬の反応の大きさは100%となる。作用薬の用量‐作用曲線は競合的拮抗薬により、高濃度側へ平行移動する。一方、非競合的拮抗薬は作用薬の濃度を上げても、作用薬の最大反応の大きさは回復しない。一般に、非競合的拮抗薬は、受容体の作用薬の結合部位において作用薬とその結合を競り合うのではなく、受容体の他の部位に作用して、受容体構造に変化をもたらし作用薬の結合を妨げたり、発生するシグナルの大きさを小さくしたりする。作用薬の用量‐作用曲線は非競合的拮抗薬により、用量を増加しても途中で頭打ちとなる。


完全活性薬、部分活性薬

•すべての受容体に作用薬(アゴニスト)が結合したときに生じる最大反応によって、作用薬は部分活性薬と完全活性薬に分けられる。完全活性薬は受容体との結合に従いシグナルを発生し、作用をもたらす。部分活性薬はすべての受容体に結合しても、100%のシグナルは発生せず、完全活性薬に比べて低い作用しかもたらさない。部分活性薬の用量‐作用曲線は用量を増加しても途中で頭打ちとなる。また、部分活性薬は完全活性薬の存在下では拮抗薬(アンタゴニスト)として作用する。




自律神経系と神経節作用薬


① 交感神経と副交感神経の解剖学的な違いについて述べよ
② 神経伝達物質と神経節興奮薬について述べよ
③ 交感神経と副交感神経の神経支配は各器官に対して均等ではない。神経節遮断薬を用いると、ある器官に対する交感神経と副交感神経の優位性が分かる理由を述べよ。また、神経節遮断薬は血管及び消化管に対してどのような作用を及ぼすと予測されるか。



① 交感神経と副交感神経の解剖学的な違い

• 副交感神経は、脳から出て迷走神経を通るものと仙髄から出るものがあり、効果器近くの神経節で神経交代をする。そのため、節後線維が短い。一方、交感神経は、胸髄と腰髄より出て、交感神経幹または腹部神経節で神経交代をする。神経節と効果器が副交感神経より離れている。また、神経節において、交感神経は一本の節前線維が多数の節後線維を支配しているのに対し、副交感神経では節前線維が支配している節後線維の数は少ない。



② 神経伝達物質・神経節興奮薬

• 交感・副交感神経節前線維の神経伝達物質はアセチルコリンであり、シナプス後膜にあるニコチン受容体と結合し、節後線維を興奮させる。副交感神経節後線維の伝達物質もアセチルコリンであるが、効果器にあるムスカリン受容体と結合し、ムスカリン様作用を現す。一方、交感神経節後線維の伝達物質はノルアドレナリンであり、効果器のαおよびβ受容体と結合して、交感神経刺激反応を現す。
• 神経節興奮薬にはタバコの葉に含まれるニコチンがある。少量で刺激作用、大量で著明な刺激作用のあと抑制作用が起きる。毒性が強く、中毒症状も起こりやすい。臨床では禁煙補助剤に用いられる。



③ 拮抗二重支配と神経節遮断薬

• ヘキサメトニウムなどの神経節遮断薬の作用は交感・副交感の両神経節ともに現れるので、各器官の自律神経支配に交感または副交感神経系のどちらが優勢であるかによって、神経節遮断に伴う生理的変化が影響されるので交感神経と副交感神経の優位性がわかる。(神経節遮断薬によって、その器官で優位に働いている方の神経の作用がより強く遮断される。)
• 血管は、交感神経が優位に支配しているため、神経節を遮断すると、交感神経節遮断の影響が強く現れ、血管拡張や血圧下降などが起こる。 一方、消化管は、副交感神経が優位に支配しているため、神経節を遮断すると、副交感神経節遮断の影響が強く現れ、消化管運動は減少し、便秘などの症状が現れる。

薬理について01


末梢神経薬理
1.コリン作用薬
2.抗コリン作用薬
3.アドレナリン作用薬
4.抗アドレナリン作用薬
5.局所麻酔薬


中枢神経薬理
1.抗精神病薬
2.抗うつ薬、気分安定薬、精神刺激薬
3.パーキンソン病治療薬
4.抗認知症薬、脳循環・代謝改善薬
5.抗てんかん薬・中枢性骨格筋弛緩薬
6.抗不安薬
7.全身麻酔薬
8.麻酔性鎮痛薬


免疫・アレルギー・炎症薬理
1.免疫抑制薬・免疫刺激薬・抗アレルギー薬
2.抗炎症薬


呼吸器・消化器作用薬
1.呼吸器作用薬
2.消化器作用薬


利尿薬、泌尿器・生殖器作用薬
1.利尿薬
2.泌尿器・生殖器作用薬


循環器薬理
1.心臓作用薬
2.高血圧治療薬、その他の血管作用薬
3.血液・造血器作用薬


代謝性疾患治療薬


化学療法
1.抗感染症薬
2.抗腫瘍薬

2013年3月18日月曜日

就職活動、後ろ倒しに。

開始時期が後ろ倒しになった影響で、終了時期も後ろにずれ込んだ、らしい。
進路決定(自分内での納得)のために費やす平均時間(or思考量、収集情報量)は、開始時期によらず、一定量必要なのかもしれません。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1503I_Y3A310C1CR0000/?dg=1

2013年3月15日金曜日

各言語と母語話者の数


気になったので、各言語と母語話者の数を調べてみました。
Wikipediaでサクッと調べただけだから、カチッとしたものではないけれど、概要をつかむには十分かなと思います。

必ずしも「その国の人口=その国の母語話者数」ではないことを再確認。
多かったり(宗主国系)少なかったり(多民族国系)。

日本語も方言単位に分けたら、また面白くて。
たまに、「地元弁話して!」って言われるけれど、残念ながら私のいた地域は周辺の方言と混ざってしまっていて、皆さまが期待する「地元弁」は一部の地域にしか残ってない感覚です。


(01)中国語…13.7億人
(02)英語…5.3億人
(03)ヒンディー語…4.9億人
(04)スペイン語…4.2億人
(07)ポルトガル語…2.15億人
(08)ロシア語…1.6億人
(09)日本語…1.25億人
(10)ドイツ語…1.05億人
(15)フランス語…7200万人
(20)イタリア語…6100万人


【Top10言語(母語話者数順)】
(01)中国語…13.7億人
(02)英語…5.3億人
(03)ヒンディー語…4.9億人
(04)スペイン語…4.2億人
(05)アラビア語…2.3億人
(06)ベンガル語…2.2億人
(07)ポルトガル語…2.15億人
(08)ロシア語…1.6億人
(09)日本語…1.25億人
(10)ドイツ語…1.05億人

【11位~20位(母語話者数順)】
(11)パンジャーブ語…9000万人
(12)ジャワ語…7500万人
(13)朝鮮語…7500万人
(14)タミル語…7400万人
(15)フランス語…7200万人
(16)ベトナム語…7000万人
(17)テルグ語…7000万人
(18)マラーティー語…6800万人
(19)ウルドゥー語…6100万人
(20)イタリア語…6100万人

【21位~30位(母語話者数順)】
(21)トルコ語…6000万人
(22)ポーランド語…5000万人
(23)グジャラート語…4600万人
(24)ペルシア語…4600万人
(25)ウクライナ語…4500万人
(26)マチャラム語…3600万人
(27)カンナダ語…3500万人
(28)アゼルバイジャン語…3300万人
(29)オリヤー語…3200万人
(30)ビルマ語…3200万人




2013年3月12日火曜日

「人間」「動物」という概念

先日、
「動物実験を代替する手段がある場合、
それでも動物実験を正当化できるか?」
という問いを耳にした。

人体実験というと恐ろしい響きがある。
「言語道断、非倫理的だ」という言葉が聞こえてきそうだ。

一方で、動物実験というと少し違う印象を持つ人が大半ではないか。

だが、それに対して、今一歩、立ち止まって考えることが大切なのかもしれない。