2014年8月30日土曜日

アドレナリン作動性神経系

アドレナリン作動性神経系

① この神経における神経伝達物質の生合成、貯蔵、遊離、再利用、代謝について説明せよ。
② この神経が血管平滑筋を支配している場合、どのような受容体を介して血管平滑筋に作用するか。また、受容体の情報伝達機構や拮抗薬についても説明せよ。
③ α受容体のサブタイプ、作用薬と遮断薬について述べよ
④ β受容体のサブタイプ、作用薬と遮断薬、臨床適用について述べよ



① 神経伝達物質の生合成・貯蔵・遊離・再利用・代謝

• 神経終末に能動輸送で取り込まれたチロシンは細胞質でドーパーを経てドパミンまで変換される。チロシン水酸化酵素が全体の律速段階である。ドパミンは小胞モノアミントランスポーター(VMAT)により、シナプス小胞に取り込まれ、小胞内でノルアドレナリン(NA)に変わり、貯蔵される。シナプス小胞はシナプス膜にドッキングし、細胞内Ca²⁺濃度が上昇すると開口してNAが遊離する。遊離したNAはシナプス後膜や前膜のアドレナリン受容体に作用する。NAは大部分がシナプス終末や後膜に取り込まれ、一部は代謝される。シナプス終末に取り込まれたNAはVMATによりシナプス小胞へ取り込まれ再利用される。また、NAは細胞内ではMAOによって、細胞外ではCOMTによってVMAに代謝される。


②どのような受容体を介して血管平滑筋に作用するか・その受容体の情報伝達機構や拮抗薬

• 血管平滑筋にはアドレナリンα1受容体があり、この受容体に作用すると血管収縮が起こり血圧が上昇する。α1受容体はG蛋白質共役型受容体であり、アゴニストが結合すると三量体のG蛋白質のαサブユニットが分離しホスホリパーゼCを活性化する。このホスホリパーゼCは細胞内のIP₃(イノシトール三リン酸)やDAG(ジアシルグリセロール)を増加させ、細胞内のCa²⁺の放出を促進する。α1受容体の拮抗薬としてはプラゾシンやウラピジルがあり、降圧作用や前立腺弛緩作用を持つ。



③ α受容体のサブタイプ・作用薬と遮断薬

• α受容体にはα1・α2受容体がある。α1受容体は主に血管平滑筋に存在し、血管収縮などの作用を持つ。作用薬にはフェニレフリンやメトキサミンがあり、低血圧に用いられる。選択的遮断薬にはプラゾシンやウラピジルがあり、降圧作用や前立腺弛緩作用を持ち高血圧や排尿障害に用いられる。α受容体非選択的遮断薬にはフェントラミンがあり、褐色細胞腫の高血圧に用いられる。α2受容体はシナプス前膜に存在する自己受容体で神経伝達物質遊離抑制(負のフィードバック)などの作用を持つ。作用薬にはクロニジンやメチルドパがあり、高血圧に用いられる。α2受容体選択的遮断薬は臨床的にはほとんど利用されない。



④ β受容体のサブタイプ・作用薬と遮断薬・臨床適用

• β受容体にはβ1・β2・β3受容体がある。β1受容体は主に心筋に存在し、心拍増加・心収縮力増大などの作用を持つ。作用薬にはドブタミン・デノパミンがあり心筋収縮力を増強する。β2受容体は肺・肝臓・平滑筋に存在し、平滑筋弛緩・グリコーゲン分解などの作用を持つ。 作用薬には気管支喘息治療薬のプロカテロールや子宮弛緩薬のリトドリンがある。β受容体の持続的刺激は脱感作しやすい。非選択的β受容体遮断薬にはプロプラノロールやチモロールがある。心拍出量低下・レニン遊離抑制などの作用を持ち、高血圧・狭心症・不整脈に適用されるが、気管支喘息患者には禁忌である。選択的β1受容体遮断薬にはアテノロールがあり、気管支喘息患者の高血圧・狭心症・不整脈の治療に適用することができる。

2014年8月23日土曜日

自律神経系と神経節作用薬

自律神経系と神経節作用薬


① 交感神経と副交感神経の解剖学的な違いについて述べよ
② 神経伝達物質と神経節興奮薬について述べよ
③ 交感神経と副交感神経の神経支配は各器官に対して均等ではない。神経節遮断薬を用いると、ある器官に対する交感神経と副交感神経の優位性が分かる理由を述べよ。また、神経節遮断薬は血管及び消化管に対してどのような作用を及ぼすと予測されるか。



① 交感神経と副交感神経の解剖学的な違い

• 副交感神経は、脳から出て迷走神経を通るものと仙髄から出るものがあり、効果器近くの神経節で神経交代をする。そのため、節後線維が短い。一方、交感神経は、胸髄と腰髄より出て、交感神経幹または腹部神経節で神経交代をする。神経節と効果器が副交感神経より離れている。また、神経節において、交感神経は一本の節前線維が多数の節後線維を支配しているのに対し、副交感神経では節前線維が支配している節後線維の数は少ない。



② 神経伝達物質・神経節興奮薬

• 交感・副交感神経節前線維の神経伝達物質はアセチルコリンであり、シナプス後膜にあるニコチン受容体と結合し、節後線維を興奮させる。副交感神経節後線維の伝達物質もアセチルコリンであるが、効果器にあるムスカリン受容体と結合し、ムスカリン様作用を現す。一方、交感神経節後線維の伝達物質はノルアドレナリンであり、効果器のαおよびβ受容体と結合して、交感神経刺激反応を現す。
• 神経節興奮薬にはタバコの葉に含まれるニコチンがある。少量で刺激作用、大量で著明な刺激作用のあと抑制作用が起きる。毒性が強く、中毒症状も起こりやすい。臨床では禁煙補助剤に用いられる。



③ 拮抗二重支配と神経節遮断薬

• ヘキサメトニウムなどの神経節遮断薬の作用は交感・副交感の両神経節ともに現れるので、各器官の自律神経支配に交感または副交感神経系のどちらが優勢であるかによって、神経節遮断に伴う生理的変化が影響されるので交感神経と副交感神経の優位性がわかる。(神経節遮断薬によって、その器官で優位に働いている方の神経の作用がより強く遮断される。)
• 血管は、交感神経が優位に支配しているため、神経節を遮断すると、交感神経節遮断の影響が強く現れ、血管拡張や血圧下降などが起こる。 一方、消化管は、副交感神経が優位に支配しているため、神経節を遮断すると、副交感神経節遮断の影響が強く現れ、消化管運動は減少し、便秘などの症状が現れる。

2014年8月16日土曜日

薬の作用点

薬の作用点

競合的結抗薬、非競合的拮抗薬、完全活性薬、部分活性薬の意味とそれぞれの用量作用曲線について説明せよ。


競合的結抗薬、非競合的拮抗薬

• 競合的拮抗薬が存在すると、作用薬の受容体への結合は阻害されるが、作用薬の濃度を上げていくと、競合的拮抗薬は受容体から追い出されて、ついに作用薬の反応の大きさは100%となる。作用薬の用量‐作用曲線は競合的拮抗薬により、高濃度側へ平行移動する。一方、非競合的拮抗薬は作用薬の濃度を上げても、作用薬の最大反応の大きさは回復しない。一般に、非競合的拮抗薬は、受容体の作用薬の結合部位において作用薬とその結合を競り合うのではなく、受容体の他の部位に作用して、受容体構造に変化をもたらし作用薬の結合を妨げたり、発生するシグナルの大きさを小さくしたりする。作用薬の用量‐作用曲線は非競合的拮抗薬により、用量を増加しても途中で頭打ちとなる。


完全活性薬、部分活性薬

•すべての受容体に作用薬(アゴニスト)が結合したときに生じる最大反応によって、作用薬は部分活性薬と完全活性薬に分けられる。完全活性薬は受容体との結合に従いシグナルを発生し、作用をもたらす。部分活性薬はすべての受容体に結合しても、100%のシグナルは発生せず、完全活性薬に比べて低い作用しかもたらさない。部分活性薬の用量‐作用曲線は用量を増加しても途中で頭打ちとなる。また、部分活性薬は完全活性薬の存在下では拮抗薬(アンタゴニスト)として作用する。