2014年9月27日土曜日

末梢性筋弛緩薬

末梢性筋弛緩薬

① 末梢性筋弛緩薬の薬理作用・使用目的・臨床適用・構造的特徴について述べよ
② 末梢性筋弛緩薬の作用機序による分類と主な薬物について述べよ


① 末梢性筋弛緩薬の薬理作用・使用目的・臨床適用・構造的特徴

• 末梢性筋弛緩薬とは骨格筋の選択的弛緩をもたらす薬物のうち、神経筋接合部や筋細胞に作用するもののことである。これは、外科手術時の全身麻酔の補助・痙攣性疾患・電気ショック療法の補助などに使用される。主な副作用としては、筋肉痛や徐脈などがあり、緑内障患者には禁忌である。その構造的特徴は、アセチルコリンと類似の構造を分子内に有し、第4級アンモニウム基を有することである。

②末梢性筋弛緩薬の作用機序による分類と主な薬物

• 競合的拮抗薬にはクラレ・d‐ツボクラリン・パンクロニウム・ベクロニウムがある。これは神経筋接合部においてニコチン性アセチルコリン受容体をアセチルコリンと競合し、コリンエステラーゼ阻害薬と拮抗する。収縮の速い小さな筋から弛緩していく。脱分極性拮抗薬にはサクシニルコリン・デカメトニウムがある。これは持続的な脱分極により神経伝達を抑制する。サクシニルコリンはコリンエステラーゼで分解され、コリンエステラーゼ阻害薬によって作用が増強される。 Ca²⁺遊離阻害薬にはダントロレンがあり、筋小胞体からのCa遊離を抑制して筋を弛緩させる。悪性高熱症に有効である。伝達物質遊離阻害薬にはボツリヌス毒素があり、シナプス小胞からの開口放出を不可逆的に阻害する。顔面の痙攣の治療などに用いられるが、新たな神経終板が形成されるため効果は徐々に消失する。

2014年9月20日土曜日

局所麻酔薬

局所麻酔薬

① 局所麻酔薬の使用目的と適用方法について述べよ
② 局所麻酔薬の作用機序と知覚神経の感受性の違いについて述べよ
③ 局所麻酔薬の頻度依存性作用(frequencyor‐use‐dependent effect)について述べよ
④ 局所麻酔薬の構造的特徴と主な薬物について述べよ


① 局所麻酔薬の使用目的と適用方法

•  局所麻酔薬は局所に適用して知覚神経の伝導を阻害し、主に痛感を遮断する目的で歯科治療・簡単な外科治療・抗不整脈などに使用される。その適用方法には、粘膜等に塗布などを行う表面麻酔・手術部位周辺に注射し薬物を直接作用させる浸潤麻酔・神経内やその周囲に注射してその神経の支配領域を麻痺させる伝達麻酔・脊髄くも膜下腔に注入しその支配下の広領域を麻痺させる脊髄麻酔などがある。また、局所麻酔薬は局所に高濃度の状態で留めておく必要があり、血流による拡散を防ぐためエピネフリンなどの血管収縮薬と併用される。

② 局所麻酔薬の作用機序と知覚神経の感受性の違い

• 局所麻酔薬は神経軸索のNaチャネルに内側から直接作用し、Na⁺の流入を防ぐ。その結果、活動電位の上昇は抑えられ、神経伝導は遮断される。また、一般に神経線維の局所麻酔薬に対する感受性は、細い線維ほど高く、無髄線維は有髄線維より高い。よって、局所麻酔薬により遅く鈍い痛み(細い無髄C線維)、速く鋭い痛み・温覚(細い有髄Aδ線維)、触覚(太くて有髄のAβ線維)、深部感覚、骨格筋の緊張・随意運動の順に麻痺していく。


③ 局所麻酔薬の頻度依存性作用(frequency‐or‐use-dependent effect)

• 局所麻酔薬の遮断強度が、神経がどれだけの頻度(frequency)で、あるいはどのくらい前もって刺激されていたか(つまりどれだけ最近に使われていたか(use))によって異なること。つまり、興奮していない静止期の神経は、頻繁に刺激されている神経よりも局所麻酔薬に対する感受性が低くなるが、あらかじめ高頻度で刺激されていると、局所麻酔薬の遮断効果は増強されるということ。
  ( Na⁺チャネルが開いた状態のときのみ、プロトン型の局所麻酔薬が結合でき、Na⁺チャネルが不活性化した状態ほど局所麻酔薬は強く、しかも持続性に結合できるためと考えられている。 )

④ 局所麻酔薬の構造的特徴と主な薬物

• 局所麻酔薬は脂溶性の芳香環グループと親水性のアミングループがエステルまたはアミド結合で繋がり、細胞膜を透過するためにある程度の脂溶性を持つ。その多くは弱塩基で、イオン化(親水性)・非イオン化(脂溶性)が混在し、一般に脂溶性が高いほうが強力である。炎症部位ではpHが下がっているので効きにくくなると考えられている。代表的な薬物としてコカの葉に含まれるコカインがあり、その他プロカイン、リドカイン、テトラカイン、ブピバカイン、ロピバカインなどがあり、

2014年9月13日土曜日

非アドレナリン非コリン作動性神経系

非アドレナリン非コリン作動性神経系


① 神経伝達物質としてのATP(アデノシン三リン酸)の作用について述べよ
② 一酸化窒素(NO)について述べよ
③ 神経ペプチドについて述べよ




① 神経伝達物質としてのATPの作用

• ATPは、自律神経や中枢神経終末のシナプス小胞に他の神経伝達物質と高濃度に共存し、神経インパルスにより、シナプス小胞から開口分泌によって放出される。ATPはシナプス後膜のATP受容体P2Xに働き、迅速なシナプス伝達を仲介し、またATP受容体P2Yに働きシナプス伝達を多様に変調させる。ATPは血管拡張作用により各種組織の血流を増加させたり、神経因性疼痛を引き起こしたりする。また、ATPが加水分解されて生成したアデノシンも情報伝達物質として作用し、神経伝達物質の遊離阻害や冠血管弛緩作用を持つ。




② 一酸化窒素(NO)

• NOは血管内皮弛緩因子(EDRF)として同定された最小の情報伝達物質である。ラジカル構造を持ち、半減期は短い。常温で気体であり、脂溶性で細胞膜を自由に通過するため、細胞内に貯蔵できず、産生されると直ちに拡散し、細胞膜をこえて周辺の細胞に速やかに浸透する。NOはNO合成酵素(NOS)によりL‐アルギニンと酸素からL‐シトルリンとともに生成される。細胞質に常在するnNOS(神経型)とeNOS(血管内皮型)は細胞内Ca²⁺濃度によって調節されシナプス可塑性の維持や血小板凝集抑制などの機能を持つ。iNOS(誘導型)はマクロファージや好中球による殺菌作用に関与している。NOは可溶性グアニル酸シクラーゼの内因性活性化因子で、cGMP産生を増加させ、血管拡張などの多様な反応を引き起こす。




③ 神経ペプチド

• 神経ペプチドは神経伝達物質として働き、ニューロン内に低分子伝達物質と共存している。細胞体で合成された神経ペプチド前駆体はゴルジ体でプロセシングを受けながら、神経終末に運ばれ低分子伝達物質とは異なる小胞に貯蔵され、遊離させるためには高頻度刺激が必要となる。サブスタンスPはカプサイシンにより遊離され痛覚に関与し、血管透過性の亢進、平滑筋収縮などの作用を持つ。ニューロペプチドYは中枢では摂食促進、末梢では血管収縮などの作用を持つ。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)はG蛋白質共役型受容体を持ち、知覚・統合運動機能に重要な働きがあり、血管拡張作用などを持つ。他には鎮痛や腸管収縮抑制作用を持つエンドルフィン・ダイノルフィン・エンケファリンもある。

2014年9月6日土曜日

コリン作動性神経系

コリン作動性神経系

① アセチルコリンの生合成について説明せよ。
② 神経伝達が終了したアセチルコリンはほかの神経伝達物質とは異なるメカニズムでシナプス間隙から取り除かれる。そのメカニズムを他の神経伝達物質と比較して説明せよ。また、最近話題になっているメタミドホスと関連があれば、それも説明せよ。
③アセチルコリンを神経伝達物質とする末梢神経系を挙げ、その神経系で利用されるアセチルコリン受容体をそれぞれ説明せよ。


④ ムスカリン受容体とニコチン受容体について、それらの存在部位を説明せよ。また、ムスカリン受容体遮断薬が消化管および循環系に及ぼす作用を説明せよ。
⑤ 小腸に存在するアセチルコリンの受容体について説明せよ。
⑥ アセチルコリン受容体の作用薬と遮断薬について説明せよ。



① アセチルコリンの生合成

• アセチルコリンはコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)によりアセチルCoAとコリンから細胞質で合成される。この反応の律速段階はコリンの取り込みである。ChATは細胞体で合成され軸索輸送によって運ばれて、神経終末の細胞質に存在する。アセチルCoAはミトコンドリア内膜で主にピルビン酸脱水素酵素により合成され、細胞質に運ばれる。コリンは神経系では合成されず、アセチルコリンの分解産物や膜のホスファチジルコリンが終末内に取り込まれる。生合成されたアセチルコリンは、小胞内から外へのH⁺の逆輸送と共役して小胞内に取り込まれる。


② アセチルコリンの代謝とメタミドホス

• アセチルコリン以外の神経伝達物質(例えば、セロトニンやカテコラミン)は、神経終末から放出され、神経伝達を終えた後、そのままの形で神経終末へ再取り込みされることで、シナプス間隙から取り除かれる。一方、アセチルコリンは、神経伝達を終了すると、そのままの形で再取り込みされず、コリンエステラーゼによってコリンと酢酸に速やかに加水分解され、コリンは神経終末に取り込まれて再利用される。 有機リン系殺虫剤のメタミドホスは、コリンエステラーゼの不可逆的な阻害薬であるため、シナプス間隙からアセチルコリンが取り除かれないままになり、興奮が連続して伝えられ続ける状態となる。よって、神経生理機能に障害を与える。




③ アセチルコリンを伝達物質とする末梢神経系と受容体

• アセチルコリンを伝達物質とする末梢神経系には、運動神経・交感神経節前線維・副交感神経節前線維・副交感神経節後線維・汗腺支配交感神経節後線維などがある。運動神経 には筋肉型ニコチン受容体NMが、交感神経節前線維・副交感神経節前線維 には(末梢)神経型ニコチン受容体NN がある。また、副交感神経節後線維・汗腺支配交感神経節後線維にはムスカリン受容体Mがある。なお、ニコチン受容体は二つのサブタイプを持つイオンチャネル型受容体であり、ムスカリン受容体は五つのサブタイプを持つGタンパク質型の受容体である。


④ ムスカリン受容体とニコチン受容体の存在部位・ムスカリン受容体遮断薬が消化管および循環系に及ぼす作用

• ムスカリン受容体Mは副交感神経節後線維や汗腺支配交感神経節後線維に存在する。ニコチン受容体は、運動神経終末の神経筋接合部に筋肉型ニコチン受容体NMが、交感神経節前線維や副交感神経節前線維に神経型ニコチン受容体NNが存在する。
• 消化管にはムスカリン受容体遮断薬は消化管緊張の低下と運動の減少作用を持ち、消化管潰瘍や胃腸炎などの治療に用いられる。また、循環系にはムスカリン受容体遮断薬は少量で徐脈から頻脈にする作用を持ち、迷走神経過興奮による徐脈や迷走神経反射の抑制に用いられる。


⑤ 小腸に存在するアセチルコリンの受容体

• 小腸にはムスカリン受容体M3とM2がある。ベサネコールなどのムスカリン受容体作用薬を用いると、小腸は収縮し蠕動運動が亢進し、消化管麻痺などの治療効果がある。一方、ブチルスコポラミンなどのムスカリン受容体遮断薬を用いると、消化管緊張の低下と運動の減少が起こり、消化性潰瘍や腸炎などの治療効果がある。

⑥ アセチルコリン受容体の作用薬と遮断薬


• コリン作用薬には消化管運動を促進するベサネコールや緑内障治療薬のカルバコール・ピロカルピンがある。コリン作用薬にはコリンエステラーゼ作用薬もあり、重症筋無力症や排尿障害治療薬のネオスチグミンやアルツハイマー病治療薬のドネペジルがある。サリンなどの不可逆的阻害薬は強い毒性を持つ。筋肉型ニコチン受容体遮断薬は末梢性筋弛緩薬として臨床適用され、拮抗型としてd‐ツボクラリンが、脱分極型としてサクシニルコリンがある。 神経型ニコチン受容体遮断薬には自律神経遮断薬のヘキサメトニウムがある。 ムスカリン受容体遮断薬には、散瞳薬や不可逆的コリンエステラーゼ阻害薬の解毒に使われるアトロピンや胃潰瘍治療などに使われるブチルスコポラミンがある。