2014年11月1日土曜日

強心薬・心不全治療薬

強心薬・心不全治療薬

① 心不全とはどのような病気であるか・慢性心不全の代償機構について述べよ
② 強心配糖体の作用機序と副作用について述べよ
③ cAMPを増加させる強心薬について述べよ
④ その他の心不全治療薬について述べよ




① 心不全とは・慢性心不全の代償機構

• 心不全は心筋障害などによる心機能低下により、心臓が適切に末梢組織に血液を供給できない状態で、心筋梗塞・拡張型心筋症などの器質的心疾患の結果として生じる。慢性心不全により、心臓に様々な代償機構が働く。レニン‐アンジオテンシン系の亢進により腎臓でのNaと水の再吸収量が増加し、循環血液量の増大で心拍出量が増加(Frank‐Starling機構)したり、交感神経の活性化により心拍数が増加し、心拍出量が増加したり、末梢細動脈の収縮により、脳・腎臓などの中央循環を維持したりする。これらの代償機構により浮腫・不整脈・末梢組織の酸素不足や心筋のリモデリングを引き起こし、心機能がさらに悪化し悪循環に陥る。




② 強心配糖体の作用機序と副作用

• 強心配糖体の代表的なものとして、ジギタリスがある。これは、Na+/K+‐ATPaseを阻害することで、細胞内Na⁺濃度を上昇させる。これにより、Na⁺‐Ca²⁺交換系の逆交換(Ca²⁺の流入)を促進し、心筋細胞内Ca2+濃度を上昇させ、心収縮力の増強と心拍数低下を引き起こし、心機能効率が良くなる。治療域濃度のジギタリスは、副交感神経緊張を高め、交感神経緊張を下げ、心臓の刺激伝達系を抑制する。ジギタリスにはジギトキシンやジゴキシンがあり、主にジゴキシンが臨床でうっ血性心不全や、心房細動などの不整脈に適用される。しかし、ジギタリスは治療域が非常に狭く、治療域を超えると異所性不整脈、心室性不整脈、消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振)などの重篤な副作用が見られる。



③ cAMPを増加させる強心薬

• 心筋収縮力を増強する目的で、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害あるいはアデ二ル酸シクラーゼの活性化によってcAMPを増加させ、筋小胞体のCa²⁺含量を増加させる薬が心不全治療に用いられる。β1受容体に作用するカテコラミン類にはドパミン・ドブタミン・デノパミンがあり、心収縮力を増強する。デノパミンはβ1受容体の部分作用薬で脱感作しにくい。PDE阻害薬はPDE阻害によりcAMPの分解を抑制し、β受容体を介さずにcAMPを増加させる。脱感作しにくく、心収縮力増強作用と血管弛緩作用を持つ。アムリノン・ミルリノン・ピモベンダンがある。また、cAMPアナログとしてブクラデシンがあり、これは細胞内でcAMPに変化して心収縮力増強作用、末梢血管拡張による後負荷減少作用を持つ。



④ その他の心不全治療薬

• レニン‐アンジオテンシン系阻害薬のACE阻害薬(エナラプリルなど)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ロサルタン・カンデサルタンなど)は血管拡張作用による前負荷および後負荷抑制して心不全を改善する。さらに、血管リモデリングを抑制し、心筋保護作用を持つ。アドレナリンβ受容体遮断薬は心不全で過剰に亢進した交感神経作用に拮抗して、突然死を防ぐ。カルベジロールなどが使われるが、用量の設定が難しい。
*急性心不全には利尿薬や亜硝酸化合物を経静脈的に、慢性心不全には強心配糖体・アンジオテンシン系阻害薬・利尿薬を併用して経口的に用いられる。

0 件のコメント:

コメントを投稿