2014年9月6日土曜日

コリン作動性神経系

コリン作動性神経系

① アセチルコリンの生合成について説明せよ。
② 神経伝達が終了したアセチルコリンはほかの神経伝達物質とは異なるメカニズムでシナプス間隙から取り除かれる。そのメカニズムを他の神経伝達物質と比較して説明せよ。また、最近話題になっているメタミドホスと関連があれば、それも説明せよ。
③アセチルコリンを神経伝達物質とする末梢神経系を挙げ、その神経系で利用されるアセチルコリン受容体をそれぞれ説明せよ。


④ ムスカリン受容体とニコチン受容体について、それらの存在部位を説明せよ。また、ムスカリン受容体遮断薬が消化管および循環系に及ぼす作用を説明せよ。
⑤ 小腸に存在するアセチルコリンの受容体について説明せよ。
⑥ アセチルコリン受容体の作用薬と遮断薬について説明せよ。



① アセチルコリンの生合成

• アセチルコリンはコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)によりアセチルCoAとコリンから細胞質で合成される。この反応の律速段階はコリンの取り込みである。ChATは細胞体で合成され軸索輸送によって運ばれて、神経終末の細胞質に存在する。アセチルCoAはミトコンドリア内膜で主にピルビン酸脱水素酵素により合成され、細胞質に運ばれる。コリンは神経系では合成されず、アセチルコリンの分解産物や膜のホスファチジルコリンが終末内に取り込まれる。生合成されたアセチルコリンは、小胞内から外へのH⁺の逆輸送と共役して小胞内に取り込まれる。


② アセチルコリンの代謝とメタミドホス

• アセチルコリン以外の神経伝達物質(例えば、セロトニンやカテコラミン)は、神経終末から放出され、神経伝達を終えた後、そのままの形で神経終末へ再取り込みされることで、シナプス間隙から取り除かれる。一方、アセチルコリンは、神経伝達を終了すると、そのままの形で再取り込みされず、コリンエステラーゼによってコリンと酢酸に速やかに加水分解され、コリンは神経終末に取り込まれて再利用される。 有機リン系殺虫剤のメタミドホスは、コリンエステラーゼの不可逆的な阻害薬であるため、シナプス間隙からアセチルコリンが取り除かれないままになり、興奮が連続して伝えられ続ける状態となる。よって、神経生理機能に障害を与える。




③ アセチルコリンを伝達物質とする末梢神経系と受容体

• アセチルコリンを伝達物質とする末梢神経系には、運動神経・交感神経節前線維・副交感神経節前線維・副交感神経節後線維・汗腺支配交感神経節後線維などがある。運動神経 には筋肉型ニコチン受容体NMが、交感神経節前線維・副交感神経節前線維 には(末梢)神経型ニコチン受容体NN がある。また、副交感神経節後線維・汗腺支配交感神経節後線維にはムスカリン受容体Mがある。なお、ニコチン受容体は二つのサブタイプを持つイオンチャネル型受容体であり、ムスカリン受容体は五つのサブタイプを持つGタンパク質型の受容体である。


④ ムスカリン受容体とニコチン受容体の存在部位・ムスカリン受容体遮断薬が消化管および循環系に及ぼす作用

• ムスカリン受容体Mは副交感神経節後線維や汗腺支配交感神経節後線維に存在する。ニコチン受容体は、運動神経終末の神経筋接合部に筋肉型ニコチン受容体NMが、交感神経節前線維や副交感神経節前線維に神経型ニコチン受容体NNが存在する。
• 消化管にはムスカリン受容体遮断薬は消化管緊張の低下と運動の減少作用を持ち、消化管潰瘍や胃腸炎などの治療に用いられる。また、循環系にはムスカリン受容体遮断薬は少量で徐脈から頻脈にする作用を持ち、迷走神経過興奮による徐脈や迷走神経反射の抑制に用いられる。


⑤ 小腸に存在するアセチルコリンの受容体

• 小腸にはムスカリン受容体M3とM2がある。ベサネコールなどのムスカリン受容体作用薬を用いると、小腸は収縮し蠕動運動が亢進し、消化管麻痺などの治療効果がある。一方、ブチルスコポラミンなどのムスカリン受容体遮断薬を用いると、消化管緊張の低下と運動の減少が起こり、消化性潰瘍や腸炎などの治療効果がある。

⑥ アセチルコリン受容体の作用薬と遮断薬


• コリン作用薬には消化管運動を促進するベサネコールや緑内障治療薬のカルバコール・ピロカルピンがある。コリン作用薬にはコリンエステラーゼ作用薬もあり、重症筋無力症や排尿障害治療薬のネオスチグミンやアルツハイマー病治療薬のドネペジルがある。サリンなどの不可逆的阻害薬は強い毒性を持つ。筋肉型ニコチン受容体遮断薬は末梢性筋弛緩薬として臨床適用され、拮抗型としてd‐ツボクラリンが、脱分極型としてサクシニルコリンがある。 神経型ニコチン受容体遮断薬には自律神経遮断薬のヘキサメトニウムがある。 ムスカリン受容体遮断薬には、散瞳薬や不可逆的コリンエステラーゼ阻害薬の解毒に使われるアトロピンや胃潰瘍治療などに使われるブチルスコポラミンがある。

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