2014年11月15日土曜日

全身麻酔薬

全身麻酔薬


① 全身麻酔薬の特徴と臨床適用について述べよ。
② 全身麻酔薬の作用機序について述べよ。
③ 主な全身麻酔薬とその作用について述べよ。



① 全身麻酔薬の特徴と臨床適用

外科的手術に必須な全身麻酔の条件は睡眠(無意識)、鎮痛および筋弛緩(不動化)である。全身麻酔ではこれらを可逆的に、任意の時間だけ得られることが望まれる。静脈注射による静脈内麻酔と肺からの吸入による吸入麻酔が一般的である。初期には全身麻酔薬として笑気(亜酸化窒素)・エーテル・クロロホルムが用いられた。全身麻酔薬は中枢を非特異的に抑制するが、一様に抑制するわけではなく、下行性に進行し、大脳皮質→大脳基底核→小脳→脊髄→延髄の順に抑制する。麻酔深度には第Ⅰ期から第Ⅳ期まであり、手術適応期は第Ⅲ期の第2・3相である。麻酔深度が第Ⅳ期になると呼吸停止・血圧低下が起こり死に至るので、麻酔深度を的確に判断する必要がある。麻酔前投与薬には、抗不安薬・鎮静薬・鎮痛薬・副亣感神経遮断薬・制吐薬・筋弛緩薬などがある。


② 全身麻酔薬の作用機序

古くから多くの仮説が提唱されているが、実験証拠がありすべての現象を説明できるものはない。意識消失、鎮痛、運動・反射の抑制、記憶喪失などの作用強度や脳での作用点は個々の麻酔薬によって異なり、一般的な拮抗薬は存在しない。油/ガス分配係数と麻酔作用が相関を示すというリポイド説は、立体特異性が無く、麻酔作用を持つ分子構造の多様性、拮抗薬が無く、水溶性が高い分子の作用発現が遅いことなどが説明できる。酸化的リン酸化の阻害・ATPase活性の抑制によるとするエネルギー代謝・利用抑制説や、麻酔薬の標的は蛋白質でシナプス伝達に作用するという蛋白質説もある。GABAA受容体に作用し、グルタミン酸受容体のNMDA受容体やアセチルコリン受容体のニコチン受容体を抑制するなどの興奮性シナプス伝達の抑制によるとも考えられている。


③ 主な全身麻酔薬とその作用

全身麻酔薬には用量の増減が容易な吸入麻酔薬と即効性の静脈内麻酔薬がある。吸入麻酔薬には揮発性のハロタン・セボフルラン・イソフルラン、ガス性の亜酸化窒素(笑気)があり、静脈内麻酔薬にはプロポフォール・ケタミンがある。ハロタンは局所刺激性がないが、鎮痛作用が弱いので笑気と併用する。不整脈を誘発し、肝機能を抑制する。セボフルラン・イソフルランは導入・回復が速やかで、肝障害や不整脈誘発はハロタンより弱い。亜酸化窒素は強力な鎮痛作用を持つが、手術適応期になりにくいので他の全身麻酔薬と併用し、低酸素に注意する。プロポフォールは中枢神経におけるGABAA受容体に作用する。導入・回復が速やかで、術後嘔吐などの不快感が尐ない。麻酔の維持にオピオイドや笑気を併用し、血圧を低下させる作用がある。乳濁注射液なので凍結後は使用不可である。ケタミンはNMDA受容体拮抗薬として作用し、解離型麻酔薬とも呼ばれる。強い鎮痛作用を持ち、回復に時間がかかり、回復後も記憶喪失作用がある。乱用により麻薬指定がされている。

2014年11月8日土曜日

中枢神経系の神経伝達

中枢神経系の神経伝達


① グルタミン酸の中枢神経系における役割とその生合成・貯蔵・取り込みについて述べよ。
② グルタミン酸受容体について述べよ。
③ GABA(γ-アミノ酪酸)の役割とその分布・生合成・貯蔵・遊離・取り込みについて述べよ。
④ GABA 受容体について述べよ。
⑤ GABA は脳内の主要な抑制性神経伝達物質であり、GABAA 受容体は多くの中枢神経系薬物の作用点となっている。 GABAA 受容体に作用して臨床効果を発揮する薬物(群)を列挙し、薬理作用を説明せよ。また、共通の作用がありながら、薬理作用や臨床応用が大きく異なる理由について考察しなさい。
⑥ 以下の囲み記事はギャバ入り食品を説明した、あるインターネットサイトの文章(一部改変)である。著者が、抑制性神経と個体レベルでの鎮静を混同していることを含め、全体的に明らかに間違った内容となっている。以下の設問に答えなさい。


あなたはチョコレートを食べて、ホッとしたことはありませんか?それはチョコレートに含まれるギャバの効果です。ギャバ(GABA)の正式名はγアミノ酪酸といい、脳内で抑制系の神経伝達物質としてはたらいており、ギャバを摂ることでイライラなどをやわらげる効果があります。ストレスで痛めつけられた神経を鎮静してくれたり、精神の安定にも役立ちます。睡眠障害、自律神経の失調、うつ、更年期の抑うつや初老期の不眠といった症状の改善にも効果が期待されています。


(1)一つ一つの興奮性、抑制性神経の活動と個体レベルでの興奮、鎮静との関係について説明しなさい。
(2)経口摂取したGABA の脳内移行はほとんどないが、もし移行したとしたら、どのような症状が現れると考えられるか。また、そう考えた理由も述べなさい。
(3)うつ病患者で脳内GABA 濃度が上昇したときに起こることを予想しなさい。




①グルタミン酸の役割と生合成・貯蔵・取り込み

グルタミン酸は中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質であり、脳神経系の情報伝達・可塑性・形成に重要な役割を担っている。グルタミン酸はα-ケトグルタル酸・アスパラギン酸・グルタミンから生成される。グルタミン酸の生合成は前駆物質であるグルタミンの蓄積により一部調節され、さらに、最終産物により抑制性制御を受けている。生合成されたグルタミン酸は、ATP 依存性でプロトン勾配を利用する小胞グルタミン酸トランスポーター(VGLUT)によりシナプス小胞に取り込まれる。シナプス間隙に放出されたグルタミン酸は神経終末にそのまま取り込まれる以外に、グリア細胞に取り込まれ、グルタミンとなり遊離される。グルタミンは神経でグルタミン酸に変換される。細胞外のグルタミン酸濃度が長時間上昇すると傷害性を示す。興奮性神経細胞は高濃度のグルタミン酸を含むので、傷害を受けた細胞からグルタミン酸が遊離しさらに周囲の細胞を傷害させる。



② グルタミン酸受容体

グルタミン酸受容体にはイオンチャネル型と代謝型があり、イオンチャネル型はNon-NMDA型とNMDA型に分類される。Non-NMDA型はさらにAMPA型とKainate型に分類される。AMPA受容体はNa⁺・K⁺を通す非選択的陽イオンチャネルであり、一部はCa²⁺透過性を有し、速い興奮性神経伝達の大部分を担っている。NMDA受容体はNa⁺・K⁺・Ca²⁺非選択性イオンチャネルである。静止膜電位付近ではMg²⁺により抑制されているが、シナプス後膜が大きく脱分極するとMg²⁺による抑制が解除され活性化する。遅い興奮性神経伝達を担い、シナプス可塑性や神経回路構築に重要な役割を果たし、虚血などによる神経傷害にも関与している。NMDA受容体はグリシンやポリアミンにより増強され、フェンシクリジンやケタミン結合部位など多くの修飾物質が知られている。代謝型はイノシトールリン酸やG蛋白質と共役し、シナプスやグリア細胞に存在し、広範な作用を示す。


③ GABAの役割と分布・生合成・貯蔵・遊離・取り込み

GABAは興奮性伝達物質によるシナプス伝達を抑制する神経伝達物質として重要な役割を担い、多くの中枢抑制薬の作用点である。GABAは脳内に広く分布し、黒質・淡蒼球などに特に多い。末梢の膵ランゲルハンス島β細胞などにも分布し、末梢では血圧低下作用などを持つ。GABAはグルタミン酸からGAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)により合成される。ビタミンB6はGADの補酵素であり、ビタミンB6欠乏によってGABAは減尐する。GABAは小胞GABAトランスポーター(VGAT)により神経終末の扁平なシナプス小胞内に貯蔵される。GABAは神経インパルスによってCa²⁺依存性にシナプス間隙に遊離されるが、開口分泌によらない遊離が多い。シナプス間隙に遊離されたGABAは神経終末およびグリア細胞へ急速に取り込まれる。


④ GABA受容体

GABA受容体にはGABAA受容体・GABAB受容体・GABAC受容体がある。GABAA受容体はCl⁻チャネルと共役し、GABAが結合するとCl⁻が流入して神経細胞が過分極し、興奮性入力による脱分極効果が抑制される。ベンゾジアゼピンやバルビツール酸により増強され、ビククリンやピクロトキシンにより抑制され、また、てんかんや痙攣発現と関係がある。GABAB受容体は主にシナプス前終末に存在し、K⁺チャネルの活性化による過分極を引き起こし、GABAをはじめとする多くの神経伝達物質の遊離を抑制する。作用薬はバクロフェンである。

⑤ GABAA受容体に作用する薬物

●ベンゾジアゼピン
GABAA受容体に作用し、Clチャネルの開口頻度を増強することで、Cl⁻透過性を高めて過分極させ、活動電位の発生を抑制する。抗不安薬・鎮静薬・催眠薬・抗けいれん薬・筋弛緩薬として使用されている。

●バルビツール酸
GABAA受容体に結合しClチャネルを開口することですることで抑制性神経機能を亢進し、かつGlu受容体も弱く抑制することで興奮を抑制する。鎮静薬・催眠薬・抗けいれん薬・静脈麻酔薬として使用されている。

●アルコール
抑制性GABAA受容体の作用を増強し興奮性NMDA型Glu受容体を抑制する。中枢神経細胞の感受性の違いに応じて作用は下行性に進行するが、中枢神経系の脱抑制による興奮期の持続が全身麻酔薬よりも長い。また、手術期から延髄麻痺に移行するまでの期間は逆に全身麻酔薬より短く、速やかに呼吸機能,心拍機能を停止させて死に至らしめる。



●全身麻酔薬
エンフルランやプロポフォールはGABAA 受容体を活性化することで麻酔作用を発現する。全ての全身麻酔薬がGABAA 受容体に作用するわけではない。


これらはすべて同じGABAA 受容体に作用する。このうち、アルコールと揮発性麻酔薬は作用部位も同一だが、これとベンゾジアゼピン、バルビツール酸の作用点はそれぞれ異なる。また、それぞれ受容体との親和強度も異なる。これらの要因から、それぞれの薬物のCl チャネルの開口作用の有無,開口頻度の増強ないし開口時間の延長の程度に差異が生じることで、薬理作用や臨床応用は異なると考えられる。また、NMDA 型Glu 受容体等、GABAA 以外の受容体への作用の有無も関係すると考えられる。



⑥ GABA 神経系

(1)興奮性神経の活動は、主に興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸を伝達物質として行われる活動で、電位の変化による興奮が伝達される。グルタミン酸の受容体には、イオンチャネル型と代謝型の2 種類がある。これに対して、抑制性神経の活動は、主にGABA を神経伝達物質として、神経細胞の電位変化を抑えて、興奮の伝達を抑制する。GABA 受容体には、GABAA、GABAB の2 種類がある。GABAA はCl チャネルと共役していて、細胞の電位変化を抑え、神経伝達物質の遊離を抑制する。GABAB は、K チャネル活性化による過分極を引き起こす。また、個体レベルでの興奮・鎮静は亣感神経と副亣感神経の拮抗によって制御されている。そのため、興奮性の活動を行っている神経と、抑制系によって抑制される神経がいずれに属するかによって、個体レベルでの
興奮と鎮静が決まっている。

(2)GABA は、神経細胞の電位変化を抑制したり、過分極を引き起こしたりすることで、神経細胞の興奮伝達を妨げる。経口由来のGABA が移行して濃度が高くなると、神経系の活動が抑制されることに加えて、GABA 受容体作動薬に、催眠・鎮静効果があることから、催眠・鎮静効果があると考えられる。

(3)ノルアドレナリンやセロトニンなどの脳内モノアミンの低下がうつ病の原因であると考えるモノアミン仮説が正しいとすると、神経伝達物質の遊離・神経細胞の興奮伝達を抑制するGABA は、うつ病の症状を重くすると考えられる。

2014年11月1日土曜日

強心薬・心不全治療薬

強心薬・心不全治療薬

① 心不全とはどのような病気であるか・慢性心不全の代償機構について述べよ
② 強心配糖体の作用機序と副作用について述べよ
③ cAMPを増加させる強心薬について述べよ
④ その他の心不全治療薬について述べよ




① 心不全とは・慢性心不全の代償機構

• 心不全は心筋障害などによる心機能低下により、心臓が適切に末梢組織に血液を供給できない状態で、心筋梗塞・拡張型心筋症などの器質的心疾患の結果として生じる。慢性心不全により、心臓に様々な代償機構が働く。レニン‐アンジオテンシン系の亢進により腎臓でのNaと水の再吸収量が増加し、循環血液量の増大で心拍出量が増加(Frank‐Starling機構)したり、交感神経の活性化により心拍数が増加し、心拍出量が増加したり、末梢細動脈の収縮により、脳・腎臓などの中央循環を維持したりする。これらの代償機構により浮腫・不整脈・末梢組織の酸素不足や心筋のリモデリングを引き起こし、心機能がさらに悪化し悪循環に陥る。




② 強心配糖体の作用機序と副作用

• 強心配糖体の代表的なものとして、ジギタリスがある。これは、Na+/K+‐ATPaseを阻害することで、細胞内Na⁺濃度を上昇させる。これにより、Na⁺‐Ca²⁺交換系の逆交換(Ca²⁺の流入)を促進し、心筋細胞内Ca2+濃度を上昇させ、心収縮力の増強と心拍数低下を引き起こし、心機能効率が良くなる。治療域濃度のジギタリスは、副交感神経緊張を高め、交感神経緊張を下げ、心臓の刺激伝達系を抑制する。ジギタリスにはジギトキシンやジゴキシンがあり、主にジゴキシンが臨床でうっ血性心不全や、心房細動などの不整脈に適用される。しかし、ジギタリスは治療域が非常に狭く、治療域を超えると異所性不整脈、心室性不整脈、消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振)などの重篤な副作用が見られる。



③ cAMPを増加させる強心薬

• 心筋収縮力を増強する目的で、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害あるいはアデ二ル酸シクラーゼの活性化によってcAMPを増加させ、筋小胞体のCa²⁺含量を増加させる薬が心不全治療に用いられる。β1受容体に作用するカテコラミン類にはドパミン・ドブタミン・デノパミンがあり、心収縮力を増強する。デノパミンはβ1受容体の部分作用薬で脱感作しにくい。PDE阻害薬はPDE阻害によりcAMPの分解を抑制し、β受容体を介さずにcAMPを増加させる。脱感作しにくく、心収縮力増強作用と血管弛緩作用を持つ。アムリノン・ミルリノン・ピモベンダンがある。また、cAMPアナログとしてブクラデシンがあり、これは細胞内でcAMPに変化して心収縮力増強作用、末梢血管拡張による後負荷減少作用を持つ。



④ その他の心不全治療薬

• レニン‐アンジオテンシン系阻害薬のACE阻害薬(エナラプリルなど)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ロサルタン・カンデサルタンなど)は血管拡張作用による前負荷および後負荷抑制して心不全を改善する。さらに、血管リモデリングを抑制し、心筋保護作用を持つ。アドレナリンβ受容体遮断薬は心不全で過剰に亢進した交感神経作用に拮抗して、突然死を防ぐ。カルベジロールなどが使われるが、用量の設定が難しい。
*急性心不全には利尿薬や亜硝酸化合物を経静脈的に、慢性心不全には強心配糖体・アンジオテンシン系阻害薬・利尿薬を併用して経口的に用いられる。

2014年10月25日土曜日

虚血性心疾患治療薬

虚血性心疾患治療薬

① 狭心症とはどのような病気であるか、またその治療について述べよ
② 労作性狭心症と安静狭心症の成因と治療法の違いについて述べよ
③ 側副血行路を説明せよ。
④ ニトログリセリンの狭心症作用の機序とその他の狭心症治療薬について述べよ
⑤ 心筋梗塞とはどのような病気であるか、またその治療薬・予防薬について述べよ




① 狭心症とは・狭心症の治療

• 狭心症は、冠血流による心筋への酸素供給と心筋の酸素消費のバランスが崩れ、心筋の一部が一過性に酸素欠乏(虚血)状態に陥るために発生する病態である。胸痛発作が特徴で、肩や上肢などにも痛みが放散する。狭心症の治療には心仕事量を低下させ心筋の酸素需要を低下させる・虚血部への血流増加により酸素供給を増加させる・スパスム(冠動脈の痙攣)の寛解、予防・動脈硬化の防止と側副血行路の確保がある。また、心筋梗塞への移行防止も重要である。




② 労作性狭心症と安静狭心症の成因・治療法の違い

• 労作性狭心症は、冠動脈の器質的狭窄により、運動や階段を上るときなどの労作時に増えた心筋酸素需要に見合う冠血流増加がない時に起こる狭心症である。安静狭心症は、冠動脈の攣縮や血栓形成により心筋への酸素供給が不足した時に起こる狭心症である。労作に関係なく、夜間就寝中や早朝の日常動作などで胸痛が生じる。労作性狭心症には心筋の酸素消費量を減らすβ受容体遮断薬が有効で、安静狭心症には冠血管攣縮を抑制するCa拮抗薬が有効である。また、どちらのタイプの狭心症にも硝酸薬は有効である。




③ 側副血行路

• 側副血行路とは、血管の狭窄・閉塞などでの順行性血流不足部位へ血液を供給するために、対側または同側動脈が屈曲・拡張してできた血流路のことで、自然のバイパスといえる。通常の血管径は200μm以下であるが、圧力差により拡張する。血管の狭窄が緩徐に進行すると、側副血行路の発達により梗塞に至らない場合もある。



④ ニトログリセリンの狭心症作用の機序・その他の狭心症治療薬

• ニトログリセリンは体内で脱ニトロ化され一酸化窒素(NO)を遊離する。NOはグアニル酸シクラーゼを活性化し、cGMPの産生を促す結果、細胞内のCa2+濃度が低下するため血管平滑筋が弛緩し、血管拡張を起こさせる。また、全身に投与すると、血液の心臓帰還量(前負荷=静脈への作用)が減少する。
• Ca拮抗薬は強い降圧作用により後負荷(=動脈への作用)を減少させたり、冠血管攣縮を抑制する。ジルチアゼム・ベラパミルなどがある。β受容体遮断薬は心拍数や心筋仕事量を減らし、酸素消費量を減らす。また、血圧降下により後負荷を減少させる。プロプラノロール・アセブトロールなどがある。その他、アデノシンの血管拡張作用を増強するアデノシン作用増強薬のジラゼップ・ジピリダモールがある。



⑤ 心筋梗塞とは・心筋梗塞の治療薬・予防薬

• 心筋梗塞とは、冠循環障害による酸素供給不足が一定期間続くことにより起こる心筋の変性や壊死のことである。粥状硬化巣の破綻による血栓、栓塞などが原因で、壊死部から酵素が遊離したり、激しい胸痛・呼吸困難・吐き気などが症状としてあらわれる。治療にはプラスミノゲンを血栓(フィブリン)溶解作用を持つプラスミンに変換するtPA(組織型プラスミノゲンアクチベーター)などの血栓溶解薬や、鎮痛薬・抗血液凝固薬・抗不整脈薬などが用いられる。

2014年10月18日土曜日

抗不整脈薬

抗不整脈薬

① 不整脈とはどのような病気であるか、またその発生機序について述べよ
② torsades de pointesを説明せよ
③ 不整脈の原因の一つであるリエントリーの発生機序とそのサイクルを断ち切るためにどのような機序の薬が使われるか述べよ
④ 抗不整脈薬のVaughan Williamsによる分類と主な薬物について述べよ


① 不整脈とは・不整脈の発生機序


• 不整脈とは正常洞調律以外の心臓電気現象の異常の総称である。調律の異常や拍数の異常が起こり、頻脈には投薬治療を、徐脈には人工ペースメーカー治療が行われる。不整脈のなかでも心室細動は致死的である。不整脈は異所性刺激・自動能の異常などの刺激生成の異常や、洞房接合部・心筋細胞間などにおける伝導遅延やブロックなどの刺激伝導の異常によって引き起こされる。刺激生成異常にはtorsades de pointes(倒錯型心室頻拍)、刺激伝導異常にはリエントリーなどの重篤な症状になりうる異常もある。



② torsades de pointes

• torsades de pointesとは脱分極後の再分極の遅れにより、再分極過程から再び脱分極(早期脱分極)することで起こる倒錯型心室頻拍のことである。QT延長が原因となり、心室細動に移行して突然死へといたる可能性がある。Kチャネル拮抗薬などの重篤な副作用である。
*QT間隔とはAPD(活動電位持続時間)の平均的な長さのこと



③ リエントリーの発生機序とそのサイクルを断ち切るためにどのような機序の薬が使われるか

• 心筋の興奮は、洞房結節から心室筋細胞へと秩序だって伝導し消失するが、病的組織(伝導速度が異なる部位)があると、興奮の一部がもとに来た方向に引き返してしまう。すると、興奮が旋回する回路が生じ、本来は一度の興奮で何度も興奮が起こってしまい、結果、(頻脈性)不整脈になってしまう。このような状態をリエントリーと呼ぶ。心筋の不応期が短く、また伝導速度が遅いほどリエントリーのサイクルは安定する。このサイクルを断ち切るためには、不応期を延長させる薬(Na⁺チャネル拮抗薬・K⁺チャネル拮抗薬など)が有効である。薬としては、プロカインアミド・ジソピラミド・アミオダロンなどが挙げられる。



④ Vaughan Williamsによる分類と主な薬物

• クラスⅠはNaチャネル拮抗薬で、aタイプはAPDを延長し、伝導も抑制する。期外収縮などに用いられ、キニジン・プロカインアミド・ジソラピドがある。bタイプはAPDを短縮し、心室性不整脈に用いられる。リドカイン・メキシレチン・フェニトインがある。cタイプはAPDは不変で伝導抑制が強い。フレカイニドやピルジカイニドがある。クラスⅡはアドレナリンβ1受容体遮断薬で、交感神経亢進による不整脈に有効である。アセブトロールやアテノロールがある。クラスⅢはKチャネル拮抗薬でAPDと不応期を延長する。アミオダロンがあり、重篤な副作用があるため他の薬が無効な例に限り用いられる。クラスⅣはCaチャネル拮抗薬で、心筋の興奮を抑制する。ベラパミルがあるが、全てのCa拮抗薬が有効なわけではない。

2014年10月11日土曜日

高血圧症治療薬

高血圧症治療薬

① 高血圧症とはどのような病気であるか、また治療薬にはどのような種類があるか述べよ
② レニン‐アンジオテンシン系とそれに作用する薬について述べよ
③ 血管拡張薬について述べよ
④ 交感神経遮断薬について述べよ


高血圧症とは・高血圧症治療薬の分類
• 高血圧症は正常範囲以上の血圧が持続する状態であり、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上が高血圧の目安になる。大部分は原因不明の本態性高血圧症であり、残りはストレスなどが原因である。末梢血管抵抗の増大が原因と考えられ、高血圧の長期持続により腎不全・心不全・脳梗塞などの危険性が増える。治療には薬物療法だけでなく減塩・肥満防止・運動などの生活習慣の改善が必要である。また、高血圧症治療薬には血管拡張薬・交感神経遮断薬・ACE阻害薬・アンジオテンシンⅡ受容体遮断薬・利尿薬がある。


② レニン‐アンジオテンシン系とそれに作用する薬
• 腎臓の傍糸球体細胞から分泌されたレニンにより、アンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンⅠが生成され、主に肺血管内皮細胞に存在するACEによってアンジオテンシンⅡへ転換される。アンジオテンシンⅡが受容体に結合すると、副腎皮質でのアルドステロンの合成・分泌が促進され、末梢血管が収縮し、腎集合管での再吸収を促進する。これによって体液量が増加する事により、昇圧作用をもたらし、さらに心肥大、血管内皮肥厚ももたらす。ACE阻害薬はアンジオテンシンⅡを抑制する。例として、カプトプリル・エナラプリル・テモカプリルがあり、空咳が主な副作用である。アンジオテンシン受容体遮断薬はアンジオテンシンⅡと拮抗し血管を拡張する。例として、ロサルタン・カンデサルタンがあり、空咳が少ない。


③ 血管拡張薬
• Ca拮抗薬は血管平滑筋のL型Caチャネルを阻害して、血管平滑筋を弛緩させ末梢抵抗を下げることにより血圧を下げる。ニフェジピン・ニカルジピンなどのジヒドロピリジン系・ジルチアゼム・ベラパミルがあり、ジルチアゼムとベラパミルは心機能を抑制する。頭痛やめまいなどの副作用がある。他の血管拡張薬としては、NOを放出して直接血管を拡張させるニトロプルシドや細動脈に直接作用し拡張させるヒドララジンがある。


④ 交感神経遮断薬
• α1アドレナリン受容体遮断薬にはプラゾシン・ブナゾシンがあり、抵抗血管を拡張させる。βアドレナリン受容体遮断薬にはプロプラノロール・ピンドロール・アテノロールがあり、心拍出量を減少・レニン分泌抑制などをもたらす。投薬中止によるリバウンドが起こることがある。また、α1とβ受容体遮断作用をもつラベタロールもある。中枢性α2アドレナリン受容体遮断薬にはクロニジン・αメチルドパがあり、交感神経活動を抑制し、末梢抵抗の低下と心拍出量を抑制をもたらす。他には、ノルアドレナリン遊離を抑制する神経伝達遮断薬のグアネチジンや、カテコラミンを枯渇させる神経伝達物質枯渇薬のレセルピンがある。

2014年10月4日土曜日

利尿薬

利尿薬


① 利尿薬の薬理作用と腎臓の機能・構造について述べよ
② 尿の生成過程について述べよ
③ ループ利尿薬とチアジド(サイアザイド)系利尿薬の作用部位・薬効の強さ・使い方の差異を述べよ
④ その他の利尿薬の作用部位・使い方について述べよ




① 利尿薬の薬理作用と腎臓の構造
• 利尿薬は尿量とともにNa⁺、Cl⁻の排泄を増加させる医薬品であり、浮腫や高血圧などの治療に用いられる。
• 腎臓は体内の水・電解質の恒常性を維持する重要な臓器で脊椎の両側に存在する。腎臓にはその構成単位であるネフロンが約1万個ある。ネフロンは尿細管と腎小体からなる。尿細管は近位尿細管・ヘンレループ・遠位尿細管からなり、腎小体は糸球体・ボーマン嚢から成り立っている。また、ネフロンは均一ではなく、腎内の存在位置によりその構造や機能が大きく異なっている。


② 尿の生成過程
• まず、糸球体で血液中の血球・蛋白・脂質以外の血液成分が糸球体濾過を受け150L/日の原尿が作られる。次に、尿細管で再吸収される。近位尿細管では、受動的再吸収によりアミノ酸・炭酸水素イオン・水を再吸収し、Na KポンプによりNa⁺・K⁺を再吸収し、炭酸脱水素酵素によりNa⁺を再吸収し血液や尿のpHを調節している。ヘンレループでは、周囲血管と対向流系をつくり、Na⁺‐K⁺‐2Cl⁻共輸送によりNa⁺とCl⁻を再吸収する。水は再吸収されない。遠位尿細管では、Na⁺ポンプ、炭酸脱水素酵素、アルドステロンによるNa⁺‐K⁺交換作用によりNa⁺を再吸収し、K⁺とH⁺の排泄を増加する。集合管では、抗利尿ホルモン(ADH、バゾプレシン)により水を再吸収する。


③ ループ利尿薬とチアジド(サイアザイド)系利尿薬の作用部位・薬効の強さ・使い方の差異
• ループ利尿薬はヘンレ上行脚のNa⁺‐K⁺‐2Cl⁻共輸送を阻害し、Na⁺とCl⁻の再吸収を抑制する。また、プロスタグランジン類を介し腎血流量を増加させる。強力な利尿作用を持つ。例として、フロセミド・ブメタニド・エタクリン酸などがあり、急性肺水腫やうっ血性心不全などに用いられる。低カリウム血症や聴覚障害などが主な副作用である。
• チアジド系利尿薬は遠位尿細管のNa⁺‐Cl⁻共輸送を阻害する。利尿作用はループ利尿薬より弱いが降圧作用が強いため高血圧症に対して用いられる。例として、ヒドロクロロチアジドやトリクロロチアジドなどがあり、抗カリウム血症や高脂血症などが主な副作用である。


④ その他の利尿薬の作用部位・使い方
• 炭酸脱水素酵素阻害薬は近位尿細管のH⁺‐Na⁺交換系を介するNa⁺の再吸収を抑制する。アセタゾラミドは尿をアルカリ性にし、浮腫や緑内障などに用いられる。鉱質コルチコイド受容体拮抗薬はカリウム保持性利尿薬で、遠位尿細管や集合管でアルドステロンの作用を抑制する。スピロノラクトンは高アルドステロン血症に効果があり、ループ利尿薬やチアジド系利尿薬と併用される。腎上皮Na⁺チャネル阻害薬もカリウム保持性利尿薬で、遠位尿細管や集合管のNa⁺チャネルを抑制する。トリアムテレンがあり、他の利尿薬と併用して低カリウム血症を予防する。浸透圧利尿薬は水の再吸収を抑制し浸透圧を上昇させる。マンニトール・イソソルビド・グリセリンがあり、腎不全予防や脳圧・眼圧亢進の治療に用いられる。